省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業や小規模事業者が売上拡大や生産性を向上させるため、省力化につながる設備投資等を支援するための補助金です。本記事ではその概要や申請方法、審査のポイントなどをわかりやすく解説します。

※下記は主に2026年8月18日に公開された省力化投資補助金(一般型)の公募要領(第8回公募)を基礎として記載しています。第8回公募の申請受付は2026年9月18日(金)10:00~10月16日(金)17:00、採択発表は2027年2月上旬の予定です。

省力化投資補助金(一般型)の概要

補助金の趣旨(一般型、カタログ注文型共通)

人手不足に悩む中小企業・小規模事業者等が行う省力化設備やソフトウェア等の導入を支援する補助金です。

2つの類型:一般型とカタログ注文型

省力化投資補助金は一般型とカタログ注文型の2つがあり、それぞれの特徴は下記の表を参照ください。

従来はカタログ注文型のみで、汎用製品が事前にカタログに掲載されており、その中から最適なものを選んで導入する形でしたが、2025年1月に公募が始まった第1回から一般型が加わっています。カタログに登録された製品があまり充実していなかったことから、それまではカタログ注文型の利用が進んでいなかったという背景があります。省力化投資補助金をより広く普及させるために一般型が加わりましたので、公募要領では、カタログ注文型は申請が迅速かつ簡易である一方、一般型はカタログ注文型よりも審査項目が多いとされています。まずはカタログに希望する製品が載っているか確認し、載っていない場合や自社の現場に合わせた設備が必要な場合は、あきらめずに一般型を検討するようにしましょう。

また一般型について、オーダーメイド設備という特徴的な表現が入っているため特殊な設備の購入が要件になっているのかと思ってしまう方もいると思いますが、汎用設備であっても周辺機器等を事業に合わせて変える場合や、汎用設備を組み合わせて導入することでより高い省力化効果や付加価値を生み出すことができる場合には、オーダーメイド設備として扱うという整理になっているため、多くの事業者が利用できる可能性があります。

本記事では以降は一般型について記載していきます。

項目一般型(参考)カタログ注文型
特徴売上拡大や生産性向上のため、オーダーメイド設備や事業者の現場に適した汎用設備・システムの導入を支援するもの。柔軟な設備投資が可能で、個別のニーズに対応できる点がメリット。カタログ注文型は、カタログに掲載された汎用製品の購入を支援するもの。登録された製品から選択するため、手続きが簡単で導入しやすい点がメリット。                  
補助上限
(カッコ内は大幅な賃上げを行う場合)
従業員数
・5人以下 :750万円(1,000万円)
・6~20人 :1,500万円(2,000万円)
・21~50人 :3,000万円(4,000万円)
・51~100人:5,000万円(6,500万円)
・101人以上:8,000万円(1億円)
従業員数
・5人以下 :200万円(300万円)
・6~20人 :500万円(750万円)
・21人以上 :1,000万円(1,500万円)
補助率・中小企業:1/2(最低賃金の引き上げに係る特例適用時は2/3)
・小規模企業者・小規模事業者:2/3
一律1/2

対象者

主な対象者は中小企業者と小規模事業者(個人事業主を含む)です。このほか、一定の組合や特定非営利活動法人(NPO法人)、社会福祉法人、歯科医業を営む医療法人なども対象になります。以下に中小企業者と個人事業主の定義を記載しますが、条件を満たしていても大企業からの一定の出資を得ていたり直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えている場合など、実質的に大企業とみなされる場合は対象外となる点に注意しましょう。

<中小企業者>

資本金または常勤従業員数のいずれかが下記に記載の数値以下の会社・個人が対象です。組合等の要件など、詳細は公募要領を確認ください。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
5,000万100人
小売業5,000万50人
ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

<小規模事業者>

下記を満たす会社と個人事業主が小規模事業者となります。

業種常時使用する従業員の数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

対象となる経費

以下が対象経費ですが、省力化投資補助金の申請のためには必ず1つ以上の単価50万円(税抜)以上の機械設備・システム構築に対する投資が必要になっています。

項目内容
機械装置・システム構築費① 機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
② 専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
③ 改良又は据付けに要する経費
※1 生産性向上に必要な、防災性能の優れた生産設備等を補助対象経費に含めることは可能。
※2 必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必要。
運搬費運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
技術導入費知的財産権等の導入に要する経費
知的財産権等関連経費特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用等
外注費専用設備の設計等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
専門家経費本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
クラウドサービス利用費クラウドサービスの利用に関する経費

基本要件(全申請者に必須)

第7回公募からは、以前は加点項目の一つだった賃上げに関する内容が、全申請者が満たすべき基本要件に位置づけが変わっています。以下の要件を満たす3~5年の事業計画を策定する必要があり、未達の場合は補助金の返還を求められる点に注意が必要です。返還額の計算方法は要件ごとに異なり、たとえば1人当たり給与支給総額の目標が未達なら達成率に応じた額、事業場内最低賃金の要件が未達なら未達の年ごとに「補助金額÷事業計画年数」の額が返還の対象になります(赤字や天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合などは返還を求められません)。

また、第8回公募から、労働生産性や1人当たり給与支給総額の伸びを比べる起点が「応募申請時の直近の決算期」から「基準年度(補助事業が完了した日を含む事業年度)」に変わりました。たとえば3月決算の会社が2027年10月に補助事業を完了した場合、2028年3月期が基準年度となり、そこから3~5年でどれだけ伸ばすかという計画になります。

基本要件内容
① 労働生産性事業計画期間において、基準年度と比較して労働生産性を年平均成長率4.0%以上向上させること
② 1人当たり給与支給総額事業計画期間終了時点で、基準年度と比較して1人当たり給与支給総額を年平均成長率3.5%以上増加させること
③ 事業場内最低賃金事業場内最低賃金を、毎年、事業実施都道府県の最低賃金+30円以上の水準とすること(最低賃金引き上げに係る特例適用事業者は本要件の対象外)
④ 一般事業主行動計画の公表従業員21名以上の場合、交付申請時までに、次世代育成支援対策推進法に基づく有効な一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に公表すること

さらに大幅な賃上げに取り組む事業者は補助上限額の引き上げ、最低賃金引き上げに係る事業者は補助率の引き上げ(中小企業2/3)といった特例も用意されています。詳細な要件は公募要領をご確認ください。

省力化投資補助金(一般型)の申請の流れと注意点

下記が申請の流れの全体像になっています。

省力化投資補助金(一般型)の申請の流れを示した図

※補助事業実施期間は、交付決定日から17カ月以内(ただし採択発表日から19カ月後の日まで)です。効果報告は、事業計画期間の1年目が終了してから最初の4月より5年間、毎年事務局が定める期限までに行います。

注意点

まず、申請は電子申請のみとなっており、申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要であるため、できるだけ事前にGビズIDアカウントの取得手続きを行った方がよいです。

交付決定以降に対象の経費を支出し始め、事業の実施期限までに補助対象事業が終了する必要があります。交付決定前に支出した経費については補助対象外なので注意しましょう。事業の実施期限は公募ごとに異なり、第8回の一般型では交付決定日から17カ月以内(採択発表日からは19カ月以内)となっています(第7回は18カ月以内)。また、交付申請は原則として採択発表日から2か月後の日が期限で、期限までに交付申請をしないと採択が取り消されます。

そして補助事業終了から起算して30日を経過した日、または、事業完了期限日のいずれか早い日までに実績報告書を提出する必要があります。こちらも余裕を持って対応するようにしましょう。

その後補助金の請求及び交付がありますが、最後に対応する事項があります。省力化投資補助金を活用した全ての補助事業者は、事業計画期間の1年目が終了してから最初の4月より5年間、毎年事務局が定める期限までに効果報告をする必要があります。効果報告の際には、事業場内最低賃金の確認のため賃金台帳の提出も求められます。効果報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合は、補助金の返還を求められることがあるため、必ず提出するようにしましょう。このほか、補助事業で取得した設備の処分の制限や、証拠書類の保存(補助事業が完了した年度の終了後5年間)などの義務も続く点に注意が必要です。

なお、カタログ注文型においては補助金を利用した事業を営んだ結果として一定の収益を得た場合は、「収益納付」という形で補助金を返還する義務が設けられていますが、一般型の公募では収益納付は求められていません。

審査の流れとポイント

書面審査の他、ソフトウェア投資やシステム開発など書面だけでは計画の詳細を理解しにくい案件を中心に、口頭審査が行われることがあります。

書面審査と加点項目

書面審査は技術面、事業化面、政策面の3つの視点で行われます。

審査項目内容
技術面 ・省力化指数が高い取組であることが示されており、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか。
・投資回収期間が短い取組であることが示されており、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか。
・付加価値額の年平均成長率が大きい案件であることが示されており、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか。
・人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)等の導入等を行う事業計画であることが示されているか。また、汎用設備であっても、事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わることや、省力化に資する汎用設備を組み合わせて複数導入することでより高い省力化効果や付加価値を生み出すことが示されているか。
計画面・補助事業実施のための社内外の体制(人材、事務処理能力、専門的知見等)や最近の財務状況、サイバーセキュリティ対策の状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか。
・補助事業の成果が優位性や収益性を有し、かつ、省力化による結果に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。
・本事業により高い賃上げを実現する目標値が設定されており、かつその目標値の実現可能性が高い事業計画となっているか。(第8回から、補助事業の完了を待たずに実施する「足下の賃上げ」も評価)
・補助事業を実施することにより、部分的な省力化に留まらずに会社全体にシナジーや成果をもたらす取組みとなっているか。具体的には、補助事業で省力化された時間や労働力を高付加価値業務に振り向けることで賃上げにつながるような、会社全体における柔軟なリソースの最適化の観点をふまえた内容となっているか。そのうえで「労働生産性」「1人当たり給与支給総額」等の算出根拠に妥当性があるか。
政策面・地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等や雇用に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。
・事業承継を契機として新しい取組を行うなど経営資源の有効活用が期待できるか。
・先端的なデジタル技術、ロボットの活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施、経済社会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイノベーションを牽引し得るか。
・革新的で優れた省力化技術を持つ中小事業者の製品(イノベーション製品)を導入する意欲的な取組を通じて、人手不足という我が国の社会課題を解決する製品の市場拡大に寄与することが期待できるか。
・米国の追加関税措置により大きな影響を受ける事業者であるか。

第8回で特に注意したいのが、計画面に加わった「足下の賃上げ」の評価です。応募申請時の直近決算期から基準年度までの「従業員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が、最低でも物価上昇率を上回る程度の賃上げになっていない計画は、審査で大幅に不利になります。設備の導入が終わってから賃上げを始めるのではなく、補助事業の期間中から賃上げに取り組む計画にしておきましょう。なお、足下の賃上げは採択後、交付決定までの間に従業員へ表明することが必須で、補助事業期間中の賃上げの実績も確認されます。

また、加点項目は下記のようになっています。第8回でも加点項目は全10種類あり、基本的にとれる加点項目はとりに行くべきだと思います。中でも成長加速マッチングサービスの登録や事業継続力強化計画の認定は、他の項目に比べて自社で準備しやすい加点項目なので、申請締切までに無理なく対応できるか検討してみましょう。なお、以前は加点項目だった賃上げに関する内容は、前述のとおり第7回以降は全申請者必須の基本要件に統合されているため、下記の一覧には含めていません。

審査項目内容詳細
加点項目事業承継又はM&Aを実施した事業者(申請者)に対する加点過去3年以内に事業承継(株式譲渡等)により有機的一体としての経営資源(設備、従業員、顧客等)を引き継いだ事業者
事業継続力強化計画
/連携事業継続力強
化計画に対する加点
有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
成長加速マッチングサービスに登録している事業者に対する加点「成長加速マッチングサービス」において会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者(応募締切日時点)
地域別最低賃金引き上げに係る加点2024年10月から2025年9月までの間で、当該期間における地域別最低賃金以上~2025年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員数の30%以上である月が3か月以上ある事業者
事業場内最低賃金引き上げに係る加点2026年6月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、全国目安で示された額(55円)以上の賃上げをした事業者
えるぼし加点女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく「えるぼし認定」を受けている事業者
くるみん加点次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「くるみん認定」を受けている事業者
省力化ナビ加点応募申請締切日までに、中小機構「省力化ナビ」を活用し、生産性向上の知見を確認している事業者(申請に用いるGビズIDプライムと一致していることが必要)
健康経営優良法人加点健康経営優良法人2026に認定されている事業者
生産性向上支援センター利用加点生産性向上支援センターによる支援を受け、「生産性向上取組計画書」の作成が完了しており、応募申請時に同計画書を提出した事業者

口頭審査

口頭審査は、ソフトウェア投資やシステム開発など、書面では計画の詳細を正確に理解することが難しい案件を中心に、一定の基準で選ばれた事業者を対象にオンライン(Zoom等)で実施されます。対象となる基準は公表されておらず、対象の事業者にのみ連絡が来ます。所要時間は1事業者30分程度です。

口頭審査は短時間で行われ、事業者が主体的に申請に携わっていれば難易度は高くないと思われます。審査には申請事業者自身(法人代表者等)が対応する必要があり、同席できるのは申請担当者として届け出た役員または従業員1名のみで、事業計画書の作成を支援したコンサルタントなどは同席できません。コンサルなどに丸投げし内容を把握していない場合は質問に対して的確に答えられない可能性があるため、申請内容については事前に一通り頭に入れておくようにしましょう。また、口頭審査の日時調整で連絡がつかない場合や、当日に審査を始められない場合などは申請を辞退したものとみなされ不採択となることがあるため、口頭審査の案内が来たら必ず対応するようにしましょう。

(参考)省力化投資補助金(一般型)の採択率

下記が第1回から第6回までの採択率の推移です。いずれの回も6~7割程度と高水準で推移しています(第1回68.5%・第2回60.9%・第3回66.8%・第4回69.3%・第5回61.5%・第6回63.9%)。2026年8月28日に発表された第6回の採択者を主たる業種別に見ると、製造業(51.4%)と建設業(14.6%)で約3分の2を占めますが、学術研究・専門・技術サービス業、小売業、卸売業、医療・福祉、情報通信業などさまざまな業種で採択実績があります。製造業・建設業以外の事業者でも、省力化の効果や賃上げにつながる計画をきちんと示せれば、十分に採択を目指せる補助金だと考えられます。なお、第7回は2026年11月中旬、第8回は2027年2月上旬に採択発表が予定されています。

公募回申請数採択数採択率
第1回1,8091,24068.5%
第2回1,16070760.9%
第3回2,7751,85466.8%
第4回2,1001,45669.3%
第5回2,0351,25161.5%
第6回1,8411,17663.9%

まとめ

省力化投資補助金は、中小企業の生産性向上を強力に支援する制度です。2025年に始まった一般型は、事業者ごとの現場に合わせた設備投資ができ、公式スケジュールでは年3~4回の公募が予定されています。第8回からは補助事業の実施期間の短縮や「足下の賃上げ」の評価など見直しも入っているため、生産性向上を狙った投資予定がある方は、最新の公募要領を確認したうえで検討してみるとよいでしょう。

一方で細かい申請条件やポイントについて全体を把握することはなかなか難しいため、専門家に相談しながら進めるのもよいでしょう。当事務所では、税務顧問のお客様向けのオプションとして補助金の申請サポートもご用意しています。設備投資の資金計画や節税の考え方もあわせて相談できる税務顧問をお探しの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

参考