節税・税制優遇

【設備投資予定の事業者必見】中小企業経営強化税制を利用した節税法

中小企業経営強化税制とは

【2026年11月更新】令和8年度税制改正により、対象となる工具・器具・備品の金額要件が、2026年(令和8年)4月1日以後に取得したものから「1台30万円以上」→「1台40万円以上」に引き上げられました。あわせて、2025年度改正で新設されたE類型(経営規模拡大設備等)と、設備を先に取得した場合の手続きの例外についても追記しています。

中小企業経営強化税制は、中小企業が設備投資を通じて経営力を向上させるための税制優遇制度です。本記事では、2026年度までの税制改正の内容も織り交ぜながら、制度の概要から具体的な適用要件、申請方法、注意点までを詳しく解説します。

中小企業経営強化税制の概要とメリット

制度の概要

中小企業経営強化税制は、中小企業が特定の設備投資を行った場合に、税制上の優遇措置を受けられる制度です。 具体的には、原則として即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超1億円以下 の法人は7%)のどちらかを選択することができます(E類型の建物とその附属設備は、下記のとおり別の率です)。

※2025年度の税制改正により、売上高100億円超を目指す中小企業に対する措置(E類型)が設けられ、一定の建物とその附属設備が対象に追加されました(特別償却(最大25%)又は税額控除(最大2%))

適用対象者

青色申告書を提出する下記の中小企業等が対象です。下記に当てはまる場合でも、大会社から多くの出資を受けている等、実質的に大会社とみなされる場合は対象外となっています。

  • 資本金もしくは出資金が1億円以下の法人
  • 資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用者数が1,000人以下の法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
  • 協同組合等

また、電気業・水道業等の一定の事業者は対象外になっていますので、詳細は中小企業庁の手引きを確認ください。

経営力向上計画の認定が必要

原則として設備の取得前に経営力向上計画の認定を受ける必要があります。経営力向上計画の認定には一定の時間がかかるため、余裕をもって取得するようにしましょう。認定を受けた後に設備を追加・変更する場合は、計画の変更の認定を受けることもできますが、設備の取得前に必要な証明・確認の手続きや取得の時期に制約があるため、事前に確認するようにしましょう。

こちらの経営力向上計画は様々な税制優遇に利用できたり、補助金申請を行う際の加点項目となることもあるため、中小企業経営強化税制をうけるか定まっていない会社もぜひ取得しておくことをおススメします。詳細はこちらで解説していますので参照ください。

中小企業投資促進税制との違い

中小企業投資促進税制においても主に設備投資が対象となっているため、2つの制度について違いがわからず混乱する方もいらっしゃると思います。

押さえておくべき大きな違いとしては①税務上のメリットと②事務負担の2点です。

中小企業経営強化税制の利用で得られる税務上のメリットは上記の通り原則として即時償却または10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超1億円以下の法人は7%)(E類型の建物とその附属設備は別の率)ですが、中小企業投資促進税制においては取得価額の30%の特別償却が基本で、資本金の額等が3,000万円以下の法人などは、これに代えて7%の税額控除を選ぶことができます。

また、中小企業経営強化税制は下記に記載の通り、利用のための手続きが煩雑で事務負担が大きいものになっていますが、中小企業投資促進税制の適用は確定申告時に必要書類を添付するのみとなっており、事務負担が軽い点が特徴です。

中小企業投資促進税制についてもこちらのコラムで解説していますので参照ください。

適用対象となる資産や期間など

対象となる設備と資産

新品の以下の設備や資産が対象になっています。以下は基本的な金額要件で、別に類型ごとの要件や、事業に直接使う設備であること(事務用の器具備品や乗用車などは通常対象外)などの要件があります。

少額の投資から対象にはなっていますが、申請には一定の手続が必要となるため、費用対効果も考えると、ある程度の金額の設備投資を予定されている方に向いている制度といえます。

  • 機械・装置:1台または1基の取得価額が160万円以上のもの
  • 工具・器具・備品:1台または1基の取得価額が40万円以上のもの(2026年3月31日以前に取得したものは30万円以上)
  • 建物附属設備:一の取得価額が60万円以上のもの
  • ソフトウェア:一の取得価額が70万円以上のもの

※2025年度の改正により、E類型では、生産性向上設備の導入に伴い新設・増設される建物とその附属設備で、取得価額が1,000万円以上のものが対象に追加されました。

対象となる期間(2027年3月31日まで延長)

2017年4月1日から2027年3月31日までに、経営力向上計画に基づいて新品の設備を取得し、事業の用に供した場合が対象です(2025年度税制改正で2027年3月31日まで延長されました)。

類型

これまでA~Dまでの4つの類型がありましたが、2025年度改正によりC類型が2025年4月以降はなくなり、新たにE類型(経営規模拡大設備等)が設けられたため、以下の4つの類型です。

なお、「投資予定の設備がどの類型に該当するのかよくわからない」と考える方が多いと思いますが、実務的にはまずはA類型を適用できるか(工業会から証明書を取得できるか)を検討し、難しい場合はB類型へと当てはめを検討する流れをおススメします。なお、D類型は事業承継等を行った後に行う設備投資が対象です。また、E類型は売上高10億円超90億円未満の法人で、事前に「100億宣言」を行っているなどの要件を満たす場合に限られ、個人事業主は利用できません。そのため、D類型・E類型を適用できる会社はA類型やB類型と比較すると限定的です。

類型

設備要件

確認者

【A類型】生産性向上設備

旧モデルと比べて、単位時間当たり生産量・歩留まり率・投入コスト削減率のいずれかが年平均1%以上向上する設備

工業会

【B類型】収益力強化設備

年平均の投資利益率が7%以上となる投資計画に係る設備(2025年度改正で5%から引き上げ)

経済産業局

【D類型】経営資源集約化設備

事業承継等を行った後に行う、修正ROAまたは有形固定資産回転率が計画期間に応じた一定以上改善する投資計画に係る設備

経済産業局

【E類型】経営規模拡大設備等

売上高100億円超を目指す一定の法人の、年平均の投資利益率7%以上などの要件を満たす投資計画に必要な設備(一定の建物とその附属設備を含む)

経済産業局

税制措置は、原則として即時償却または10%税額控除(資本金の額等が3,000万円超1億円以下の法人は7%税額控除)です。A類型は工具が測定工具・検査工具に限られるなど、類型ごとに対象設備の細かい要件があります。E類型の建物とその附属設備(合計1,000万円以上)は、計画に書いた給与の増加目標を達成し、給与の増加割合が前年度比2.5%以上なら特別償却15%または税額控除1%、5%以上なら特別償却25%または税額控除2%で、要件を満たさないと適用できません。

手続きの流れと注意点

A類型の手続きの流れ

中小企業経営強化税制(A類型)の手続きの流れ

出典:「税制措置・金融支援活用の手引き」(中小企業庁)より抜粋

A類型の流れは上記の図の通りですが、文字にすると以下のような流れになります。工業会の証明書の発行がキーポイントになるので、設備投資の対象が決まったら、販売するメーカーの担当者等に証明書の発行が可能かどうかをすぐに確認するようにしましょう。難しければB類型を適用できるかを次に検討しましょう。

  1. 工業会等に証明書の発行を依頼する(上図①~④)
  2. 経営力向上計画を策定し、証明書を添付して担当省庁に申請する(上図⑤)
  3. 担当省庁から認定を受けたら設備を取得する(上図⑥、⑦)
  4. 税務申告する際に税制優遇措置の適用を受ける(上図⑧)

B・D類型の手続きの流れ

中小企業経営強化税制(B類型およびD類型)の手続きの流れ

出典:「税制措置・金融支援活用の手引き」(中小企業庁)より抜粋

B・D類型の流れについても同様に文字にすると以下のようになります。E類型も経済産業局の確認を受けますが、事前の「100億宣言」や、建物は確認の申請前に着工していないこと、事業に使い始めた年度の給与の増加割合の報告など、固有の手続きがあります。

  1. 投資計画を策定して公認会計士・税理士の事前確認を受け、事前確認書を取得する(上図①、②)
  2. 所轄の経済産業局に申請し、投資計画の内容について確認を受ける(上図③、④)
  3. 経営力向上計画を策定し、経済産業局発行の確認書等を添付して担当省庁に申請する(上図⑤)
  4. 担当省庁から認定を受けたら設備を取得する(上図⑥、⑦)
  5. 計画認定後、投資計画に関する実施状況報告を決められた期間に提出する
  6. 税務申告する際に税制優遇措置の適用を受ける(上図⑧)

手続きの際の注意点

再掲になりますが、A類型を考えている場合は工業会の証明書を入手できるかをすぐに確認するようにしましょう。難しい場合はB類型を、事業承継等を行っている場合はD類型も検討しましょう。

また、標準的には工業会の証明書(A類型)や経産局の確認書(B・D・E類型)の取得⇒経営力向上計画の認定⇒設備の取得というフローですが、各手続きに時間がかかることもあり、順番が標準フローと異なる場合があります。

例えば、設備を先に取得した場合でも、取得日から60日以内に経営力向上計画の申請書が担当省庁に届き、遅くともその設備を取得し事業の用に供した事業年度のうちに認定を受ければ、制度の対象になります。ただし、D類型・E類型ではこの例外は使えません。また、A類型の工業会の証明書やB類型の経産局の確認書の申請は、設備の取得前に行っておく必要があります。いずれにしても、設備を取得・供用した事業年度を過ぎてから認定を受けた場合は使えなくなるため、設備の発注を決める前に顧問税理士に相談することをおすすめします。各プロセスの準備が前後する際の取り扱い等についても、中小企業庁の手引きに詳細に記載されているため必ず手引きを確認するようにしましょう。

まとめ:中小企業経営強化税制で経営を強化しよう

中小企業経営強化税制は、中小企業の経営を強化する上で有効な手段です。 うまく活用することで、企業の経営基盤を強化し、持続的な成長を達成することができます。ぜひ一度、制度の活用を検討してみてください。また、特別償却と税額控除のどちらを選ぶべきかについては事業の状況によると思いますので顧問税理士等にご相談ください。節税に対する考え方については【法人経営者&個人事業主必見】知っておくべき節税対策の考え方で記載しているので参照いただければと思います。

参考

この記事を書いた人

有村 啓史

有村 啓史事務所代表/公認会計士・税理士

慶應大学在学中に公認会計士に合格し、Big4の一つであるKPMGあずさ監査法人に新卒で入所。複数の上場企業の会計監査、内部統制監査に従事した後、2016年より米国のUCLAにMBA留学を行う。帰国後は日本マイクロソフト株式会社にBtoBマーケターとしてビジネスサイドの経験を積み、2021年にバイオベンチャーに入社し、CFOとしてIPO準備や資金調達業務などを経験した後、独立開業。不動産関連企業の監査役も務めている。

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