税理士変更の手順と注意点|変えたい時のタイミング・断り方・引継ぎ

税理士変更の手順と注意点
タイミング・断り方・引継ぎ
「今の税理士に不満があるけれど、変えると角が立たないか」「途中で変えて、決算や申告に支障が出ないか」。税理士の変更を考えながら、こうした不安から先延ばしにしている経営者の方は少なくありません。
税理士の変更は、手順と時期さえ押さえれば、会社の手間はそれほど大きくありません。一方で、引継ぎの書類がそろわなかったり、前の税理士との担当の境目があいまいだったりすると、申告や届出に漏れが出ることがあります。本記事では、引継ぎを受ける側の税理士の立場から、税理士を変えるときの流れ、タイミング、今の税理士への伝え方、引き継ぐ書類とデータを解説します。あわせて、変えない方がよい場合や、まず今の税理士に相談した方がよい場合も紹介します。
税理士を変えたいと思う主な理由
税理士の変更を考えるきっかけとして、よく聞くのは次のような理由です。
- 相談しにくい、質問への返事が遅い
- 顧問料とサービスの内容が見合っていないと感じる
- 節税や資金繰りについて、税理士から提案がない
- 資金調達や海外展開など、会社の段階が変わって相談したい内容が広がった
- freeeなどのクラウド会計を使いたいのに、税理士があまり詳しくない
どれも、会社の成長に合わせて税理士を見直すうえで自然な理由です。ただし、1〜3のような不満は、税理士側が気づいていないだけのこともあります。「月に一度は試算表を見ながら話したい」「決算の2か月前に納税額の見込みを知りたい」など、してほしいことを具体的に伝えると、今の税理士のままで解決することもあります。変更を決める前に、一度伝えてみる価値はあると思います。
税理士を変えない方がよい場合
税理士を変えること自体は悪いことではありませんが、次のような場合は、今すぐの変更は避けるか、まず今の税理士に相談した方がよいと思います。
- 決算の直前から申告期限までの間:引継ぎと決算作業が重なり、新しい税理士が会社の状況をつかむ時間が足りません
- 税務調査の途中:経緯を知っている税理士が最後まで対応した方が、話が進めやすくなります
- 不満が一度の行き違いによるもの:連絡の手段や頻度を決め直すだけで解決することがあります
- 顧問料を下げることだけが目的のとき:顧問料が安い分、記帳や年末調整が別料金だったり、相談できる範囲が狭かったりすることがあります。業務の範囲をそろえて比べないと、かえって負担が増えることがあります
税理士を変えるタイミングはいつがよい?
おすすめは決算申告が終わった直後
税理士を変えるのに最も適しているのは、決算申告が終わった直後です。前の期の決算書と申告書がそろっているので引継ぎがしやすく、新しい税理士が期の初めから関わることができます。前の税理士との担当の境目も「前期の申告までは前の税理士、今期からは新しい税理士」とはっきり分けられます。
期の途中でも変えられる
期の途中でも、税理士を変えることはできます。新しい税理士は、期首からの帳簿を確認したうえで、その期の決算と申告を担当します。ただし、決算月が近づくほど、帳簿の確認と決算前の対策を同時に進めることになります。期の途中で変える場合は、決算月の2〜3か月前までには新しい税理士との契約を済ませておくことをおすすめします。
「税理士を変えると税務調査が来る」は本当?
「税理士を変えると税務調査に入られやすい」という話を聞くことがあります。国税庁が公表している法人税等の調査の実績の資料では、申告書や国税当局が持っている各種の資料、AIによる予測などを分析して調査の要否を判断すると説明されています。少なくともこの資料では、税理士の変更が調査の判断の材料であるとは書かれていません。税理士の変更を心配して、必要な見直しを先延ばしにする必要はないと思います。
税理士変更の流れ(5つのステップ)
税理士の変更は、次の順番で進めます。ポイントは、次の税理士を決めてから、今の税理士に解約を伝えることです。先に解約してしまうと、申告や年末調整の担当者がいない期間ができてしまいます。
- 今の顧問契約の内容を確かめる:解約を申し出る期限(「解約の○か月前までに通知」など)、顧問料をいつの分まで払うか、決算料の扱い、業務の範囲を確認します
- 次の税理士を探して面談する:見積りだけでなく、業務の範囲、担当者、連絡の手段、使っている会計ソフトへの対応を確認します。複数の事務所と面談して比べるのがおすすめです
- 次の税理士と契約し、担当の境目を決める:どの期の申告から新しい税理士が担当するか、年末調整や償却資産の申告など、決算以外の手続きはどちらが担当するかを決めます
- 今の税理士に解約を伝える:下の「今の税理士への伝え方」を参考にしてください
- 書類とデータを引き継ぐ:下の「引継ぎで受け取る書類とデータ」を参考に、返却や共有を依頼します
今の税理士への伝え方(断り方)
税理士を変える経営者の方が最も気が重いのが、今の税理士に伝える場面だと思います。伝えるときは、次の3点を押さえると、角が立ちにくくなります。
- これまでの感謝を伝える
- 理由は、不満ではなく会社の方針として伝える(「会社の段階が変わり、○○にも対応できる体制にしたい」「経理をクラウド会計に移すことにした」など)
- 担当の境目と、書類の返却のお願いを具体的に伝える
不満を一つひとつ挙げる必要はありません。言い合いになると、その後の引継ぎがしにくくなります。また、口頭で伝えた場合も、解約の日や担当の境目はメールなどの記録に残る形でも伝えておくと安心です。
例えば、次のような文面が考えられます。
いつも大変お世話になっております。これまで長年にわたりご支援いただき、ありがとうございました。
このたび、会社として経理の体制を見直すことになり、○年○月期の決算申告をもって顧問契約を終了させていただきたく、ご連絡いたしました。
つきましては、これまでお預けしている書類のご返却と、提出済みの申告書・届出書の控えのご共有をお願いできますでしょうか。
最後まで大変お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
引継ぎで受け取る書類とデータ
新しい税理士が正しく申告するには、過去の申告の内容と、会社が税務署などに出している届出を知る必要があります。前の税理士から、次のものを受け取るか、共有してもらいます。
種類 | 主なもの |
|---|---|
決算書・申告書 | 過去の決算書、法人税・地方税・消費税の申告書(別表、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書を含む) |
帳簿 | 総勘定元帳、固定資産台帳(減価償却の明細) |
届出書の控え | 青色申告の承認申請書、消費税の各種届出書、源泉所得税の納期の特例の承認申請書、申告期限の延長の特例の申請書など |
給与・源泉の資料 | 源泉徴収簿、年末調整・法定調書・給与支払報告書の資料 |
その他 | 税務調査の記録、償却資産の申告書、会計ソフトのデータ |
特に注意したいのが、次の2つです。
- 繰越欠損金がある場合:青色申告書を提出した事業年度に生じた税務上の欠損金(赤字)は、その後も続けて確定申告書を提出し、帳簿書類を保存しているなどの要件を満たせば、翌期以降の所得から差し引けます(中小法人等以外は、原則として所得の50%まで)。差し引ける期間は、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金は10年、それより前に開始した事業年度に生じた欠損金は9年です。過去の申告書は、設立からのすべての期の分を受け取っておくのが基本です。特に欠損金がある場合は、いつの期にいくら出て、その後いくら使ったかを確かめるのに、欠損金が出た期以降の申告書が欠かせません
- 電子申告の利用者識別番号など:e-Tax(国税の電子申告)の利用者識別番号や、eLTAX(地方税の電子申告)の利用者IDは、会社を利用者として取得したものです。前の税理士が管理していた場合は、番号と暗証番号を引き継いでもらいましょう。暗証番号などがわからない場合も、e-Taxでは暗証番号の再設定や、変更等届出書による利用者識別番号の確認・暗証番号の再発行、eLTAXでは暗証番号の再設定の手続きがあります。e-Taxの利用者識別番号を新しく取り直すと、前の番号のメッセージボックスの内容は引き継がれないので、取り直す前に新しい税理士に相談してください
なお、法人は、帳簿や書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則として7年間保存する義務があります(青色申告をした事業年度に欠損金が生じた場合などは、平成30年4月1日以後に開始した事業年度は10年間)。保存する義務を負っているのは会社自身なので、原本を税理士に預けたままにしている場合は、この機会に返却を依頼しましょう。
freeeを使っている会社の乗り換え
freeeなどのクラウド会計を使っている会社は、同じ事業所をそのまま使い続けられる場合、会計データを移す作業はほとんどありません。新しい税理士をfreeeの事業所に招待し、前の税理士との連携を解除することで、引継ぎの大部分が済みます。
ただし、次の3点は確認してください。
- 事業所を誰が作ったか、会社側に管理者がいるか:前の税理士が事業所を作った場合は、作成者を会社に移す手続きが必要です。会社側に管理者の権限を持つ人がいないと、連携を解除できません
- freeeの利用料を誰が払っているか:利用料を税理士事務所が払っている場合は、連携を解除する前に、支払い方法を会社に切り替える手続きが必要です
- 期の途中で変える場合の入力の状態:前の税理士が入力・確認した仕訳がどこまでか、未処理の明細がどれだけ残っているかを、境目の時点で確認します
「freeeを使っているのに、今の税理士があまり詳しくない」という理由で税理士を変える場合は、面談のときに、その税理士事務所がfreeeでどこまで対応しているか(口座やカードの連携の設定、自動で登録するルールの作り方、試算表の見方の相談など)を具体的に聞いてみるとよいと思います。当事務所のfreee税務顧問の内容はfreee税務顧問のページで紹介しています。
税理士変更でよくあるトラブルと防ぎ方
書類が返ってこない
書類の返却が進まないときは、返してほしい書類を一覧にして、期日を決めてメールなどの書面で依頼します。それでも進まない場合は、その税理士が所属する税理士会に相談する方法もあります。
顧問料が二重にかかる、または担当がいない期間ができる
解約の時期と新しい契約の開始時期がずれると、顧問料が二重にかかったり、逆にどちらの税理士も担当していない期間ができたりします。手順の3で決めた担当の境目に合わせて、解約の日を決めましょう。
届出や申告が漏れる
前の税理士が毎年出していた書類(償却資産の申告、法定調書、源泉所得税の納付など)は、担当が変わる時期に漏れやすくなります。年間の予定を新しい税理士と一緒に確認しておくと安心です。
会社の情報が漏れないか心配
税理士は、正当な理由なく、税理士業務に関して知った秘密を漏らしたり、自分や第三者のために使ったりしてはならないとされています。この義務は、税理士でなくなった後も続きます(税理士法第38条)。顧問契約が終わった後も、前の税理士はこの義務を負い続けます。
よくある質問(FAQ)
税理士を変えたら、税務署に届け出る必要はありますか?
会社が税務署に出す「税理士変更届」のような届出はありません。新しい税理士が会社の代理をするときは、会社から代理を任されたことを示す「税務代理権限証書」を、税理士が税務署に提出します(税理士法第30条)。前の税理士については、必要に応じて、前の税理士が「税務代理の委任が終了した旨の通知書」を税務署に出します。e-Taxで委任関係を登録している場合は、会社か前の税理士が解除します。これらが済んでいるかを、会社と前後の税理士の間で確認しておきましょう。
期の途中で税理士を変えた場合、その期の申告はどちらがしますか?
一般的には、その期の決算と申告は新しい税理士が担当します。ただし、前の税理士との契約で決算料の扱いが決まっていることもあるので、手順の1で契約の内容を確認しておきましょう。
個人事業主でも流れは同じですか?
基本的な流れは同じです。個人事業主の所得税の確定申告は、原則として翌年2月16日から3月15日までです(消費税の課税事業者の場合、消費税の申告期限は原則として翌年3月31日)。この時期の直前に変えると、引継ぎと申告の作業が重なるので、確定申告が終わった後に変えるのがおすすめです。
まとめ
税理士の変更は、決算申告が終わった直後に、次の税理士を決めてから今の税理士に伝える、という順番で進めると、会社の負担を小さくできます。今の税理士には、不満ではなく会社の方針として伝え、担当の境目と書類の返却を具体的にお願いしましょう。引継ぎでは、過去の申告書と届出書の控え、電子申告の利用者識別番号など、会社のものを確実に受け取ることが大切です。
一方で、決算の直前や税務調査の途中は、変更を急がない方がよいこともあります。今の税理士に希望を伝えて解決するかどうかも含めて、会社にとってよい形を選んでいただければと思います。freeeをお使いの会社で、税理士の乗り換えを考えている場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。




