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配偶者は関係ない、は誤解?
海外赴任前に知っておきたい確定申告
夫(または妻)の海外赴任が決まったとき、赴任する本人の税務手続きには目が向きやすい一方、日本に残る、あるいは一緒に海外へ帯同する配偶者自身の確定申告や控除の扱いは見落とされがちです。「専業主婦(主夫)だから関係ない」と思われがちですが、パート収入や株式の譲渡益があるケースなど、配偶者自身の申告が必要になる場合もあります。本記事では、駐在員の配偶者が確認しておくべき確定申告と控除のポイントを整理します(海外赴任前後の確定申告全体の流れは海外赴任・駐在員の確定申告 完全ガイドもあわせてご覧ください)。
配偶者は日本に残るのか、帯同するのかで整理する
配偶者自身の税務上の扱いは、単身赴任で配偶者が日本に残るのか、一緒に海外へ帯同するのかによって大きく変わります。配偶者が日本国内に生活の本拠を維持して生活を続ける場合は、通常引き続き「居住者」として扱われます。一方、配偶者自身も1年以上の予定で海外に転居し、日本国内に生活の本拠を残さない場合は、配偶者自身も「非居住者」に該当する可能性があります(家族・住居・職業・滞在目的や期間など、客観的な事実に基づいて個別に判定されます)。まずはご自身がどちらのケースに当てはまるかを整理しましょう。
配偶者に所得がある場合の確定申告
配偶者がパート・アルバイト収入や株式の配当・譲渡益などの所得を得ている場合、金額によっては配偶者自身の確定申告や、夫(本人)側の配偶者控除の適用可否に影響が出ます。配偶者控除の対象となるのは、配偶者の年間の合計所得金額が62万円以下(給与収入のみの場合は136万円以下)の場合です(令和8年度税制改正により、令和7年分の58万円以下・123万円以下から引き上げられました)。これを超えても、合計所得金額133万円以下(給与収入のみの場合はおおむね207万円以下)であれば、段階的に控除額が減る「配偶者特別控除」の対象になり得ます(配偶者特別控除の所得上限133万円自体は据え置きですが、給与所得控除の見直しにより給与収入換算の上限額は上がっています)。基準額は税制改正で変わることがあるため、最新の数値は国税庁の案内でご確認ください。
- 給与収入のみで、勤務先の年末調整で完結する場合:通常は配偶者自身が改めて確定申告をする必要はありません
- 複数の勤務先から給与を受けている、または給与以外の所得(株式譲渡益・原稿料等)がある場合:金額によっては配偶者自身の確定申告が必要になることがあります
- 源泉徴収ありの特定口座で株式取引をしている場合:口座ごとに確定申告をしないことを選択できますが、他の口座との損益通算や譲渡損失の繰越控除を受けたい場合は確定申告が必要です。なお、確定申告に含めると配偶者控除等の所得判定にも影響する点に注意が必要です
「自分の収入は少額だから関係ない」と思い込まず、年間の合計所得がいくらになっているかを一度確認しておくことをおすすめします。
夫が非居住者になると、配偶者控除はどうなる?
本人(夫)が1年以上の予定で海外赴任し非居住者になる場合、通常の12月の年末調整ではなく、出国日までにその年の給与について年末調整を行います(年末調整の対象外になるわけではありません)。この出国時年末調整では、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除について、生計を一にしているかは出国時の現況で、配偶者・扶養親族の所得金額は出国時点で見積もったその年1年間(出国後に得ると見込まれる分も含む)の金額で判定します。適用を受けるには「給与所得者の配偶者控除等申告書」等を勤務先に提出する必要があり、配偶者が非居住者に該当する場合は親族関係書類・送金関係書類等の提出が必要になることもあります。
なお、出国して非居住者になった後の年については、本人に日本国内源泉所得があり確定申告が必要な場合でも、配偶者控除・扶養控除は原則として適用されません(これらは居住者に認められる所得控除のため)。「出国した年」と「その後の年」とで扱いが異なる点を押さえておきましょう。
配偶者も帯同する場合の注意点
配偶者も一緒に海外へ転居し、1年以上の予定で生活の本拠を移す場合、配偶者自身も所得税法上の「非居住者」に該当する可能性があります(夫が非居住者になったからといって自動的に配偶者も非居住者になるわけではなく、配偶者本人について生活の本拠等を個別に判定します)。この場合、以下の点を確認しておく必要があります。
- 配偶者名義の国内不動産の賃料収入や、国内資産の運用・譲渡による所得など、非居住者となった配偶者に日本国内源泉所得があり、確定申告や納税・還付の手続きが必要になる場合は、配偶者自身についても納税管理人の選任・届出が必要になります(夫が選任した納税管理人が配偶者にも及ぶわけではありません。源泉徴収だけで課税関係が完結し、申告等が不要な所得もあります)
- 帯同先の国で配偶者自身が就労したり、日本企業からリモートで業務委託収入を得たりする場合、どちらの国で課税されるかは、実際に役務を提供した場所や契約内容、租税条約などによって決まるため、支払元が日本企業というだけで日本での課税が確定するわけではなく、個別に確認が必要です
- 個人住民税はその年の1月1日時点で住所がある市区町村で、前年の所得を基に課税されるため、帯同のタイミングによっては出国後も住民税の納付が必要になる年があります(住民税は市区町村が所管する地方税のため、詳細は出国時点の市区町村窓口にもご確認ください)
よくある質問(FAQ)
Q. 専業主婦(主夫)で収入が全くない場合でも、何か手続きは必要ですか?
A. 配偶者自身に所得がない場合、確定申告の義務は通常生じません。ただし、出国する年は出国時の年末調整で配偶者控除等の適用要否をその時点の状況で判定するため、勤務先への情報共有が必要です。出国後の年は、本人(夫)が非居住者となるため配偶者控除・扶養控除自体が使えなくなり、配偶者の所得の有無にかかわらず関係がなくなります。
Q. 配偶者が日本に残ってパートを続ける場合、何を確認すればよいですか?
A. 出国する年は、出国時の年末調整でその時点の配偶者の所得見積りが配偶者控除等の判定に影響しますが、出国後の年は本人(夫)が非居住者となるため配偶者控除自体が使えなくなり、配偶者の収入額とは関係がなくなります。継続して確認すべきなのは配偶者自身の申告要否です。勤務先の年末調整だけで手続きが完結するか、複数の勤務先からの給与や給与以外の所得があり配偶者自身の確定申告が必要になるかを、収入の内容に応じて確認しましょう。
Q. 夫が非居住者になった後、逆に妻が自分の確定申告で夫を配偶者控除の対象にすることはできますか?
A. 非居住者であることを理由に対象から外れるわけではありません。夫が年間を通じて非居住者の場合、配偶者控除の所得判定に使う夫の合計所得金額は国内源泉所得のみで計算されるため、海外での給与収入は通常含まれません。そのため、夫に日本国内の所得がなければ、所得基準自体は満たしやすいといえます。ただし、非居住者である夫を控除対象配偶者とするには、親族関係書類に加えて、妻から夫への生活費等の送金を証明する「送金関係書類」の提出が必要です。一般的な海外赴任のように夫から妻へ送金する形では、この書類要件を満たしにくい点に注意が必要です。
まとめ
駐在員本人だけでなく、配偶者自身の所得状況や居住形態によっても、確定申告や控除の扱いが変わります。「配偶者は関係ない」と思い込まず、日本に残るか帯同するか、配偶者自身に所得があるかを踏まえて、早めに確認しておくことをおすすめします。
出国前・赴任中・帰任後を通じた確定申告の全体像は海外赴任・駐在員の確定申告 完全ガイドで整理していますので、あわせてご確認ください。ご自身とご家族の状況に応じた確定申告・控除の適用について確認したい場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。