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事業環境変化に対応した
経営基盤強化事業(一般コース)とは?
わかりやすく解説
東京都内に本店または支店のある法人や東京都内で活動している個人事業主であれば、新たな設備投資やシステムの導入に「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」が活用できるかもしれません。「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」は幅広い経費が助成対象となっている、中小企業や個人事業主に特化した助成金事業です。
本記事では事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)について申請要件や助成額、助成対象を解説します。
経営基盤強化事業(一般コース)とは|事業の質向上と新事業展開への取り組み
経営基盤強化事業とは、企業が経営基盤を強化するために事業を深化または発展させる取り組みを支援する東京都の助成制度です。
ポストコロナ時代において、需要回復や消費者ニーズの変化への対応が求められてきました。
一方で、エネルギーや原材料の価格、人件費の高騰が長期化している点など、課題も山積みとなっています。
こうした社会状況の変化に中小企業が対応すべく、経営基盤を強化することが本事業の目的です。
補助対象となるのは、下記の2通りの取り組みにかかる経費です。
- 既存事業の「深化」
- 既存事業の「発展」
補助対象の取り組みに必要な経費の3分の2以内(別途助成率の規定あり)かつ最大800万円が助成されます。
補助対象① 既存事業の「深化」
補助対象の1つ目である既存事業の「深化」とは、事業者がこれまで営んできた事業の質を向上させるための取り組みを指します。
具体的には、下記の取り組みが該当します。
- 高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組
- 既存の商品やサービス等の品質向上の取組
- 高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組
引用:東京都中小企業振興公社|「~中小企業・小規模企業向け~ 事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」
例えば、サービスの利便性向上のために予約管理アプリを導入したり、業務効率化のための管理システムを導入したりする場合、既存事業の「深化」の対象になります。
補助対象② 既存事業の「発展」
2つ目の補助対象は、経営基盤の強化のために、自社の既存事業の強みを活かした新たな事業展開を図る取り組みです。
具体例は下記のとおりです。
- 新たな商品、サービスの開発
- 商品、サービスの新たな提供方法の導入
- その他、既存事業で得た知見等に基づく新たな取組
引用:東京都中小企業振興公社|「~中小企業・小規模企業向け~ 事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」
新商品を開発するための試作や外注費、素材の購入費などが既存事業の「発展」として助成対象になります。
一般コースと小規模事業者向けアシストコース
経営基盤強化事業には一般コースと小規模事業者向けアシストコースがあります。
両者では対象となる事業者の規模と助成上限額に違いがあります。
一般コース | 小規模事業者向けアシストコース | |
対象 | 中小企業 | 小規模事業者 |
助成上限額 | 800万円 | 200万円 |
助成率 | 2/3 (賃金引上げ計画を策定・実施した場合、中小企業者は3/4、小規模企業者は4/5) | 2/3 (賃金引上げ計画を策定・実施した場合は4/5) |
また、ともに既存事業を深化または発展させる取り組みを対象としていますが、小規模事業者向けアシストコースでは、特に下記の2項目を対象としてます。
- 生産性向上
- 業務効率化
設備投資など限られた活用であれば、小規模事業者向けアシストコースの方が申請しやすい場合があります。
詳細は東京都中小企業振興公社の公式サイトからチェックしてみてください。なお、以降は一般コースについて詳細を解説します。
経営基盤強化事業(一般コース)の申請要件
経営基盤強化事業(一般コース)の要件をまとめると以下の6つになります。
- 中小企業者であること
- 登記の場所(法人の場合)や納税地(個人事業者の場合)が都内にあること
- 売上高が減少している(または減少見込みである)、あるいは直近決算で損失が計上されていること
- 同一のテーマで他の助成金を受けていない(申請中も不可)、かつ、本制度と同等の制度で過去に1度も交付決定を受けていないこと
- 暴力団、風俗営業など社会通念上適切でないと判断される業態でないこと
- 申請に必要な書類をすべて提出できること
ここでは、主な要件である上記6点を確認しましょう。
申請要件1. 中小企業者であること
申請できるのは都内の中小企業者に限られます。
また、大企業が実質的に参画していないことが条件です。
中小企業者とは会社(株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、有限会社)および個人事業者を指し、以下のとおり規定が設けられています。
業種 | 資本金および従業員 |
製造業、情報通信業(一部はサービス業に該当)、建設業、運輸業、その他 | 3億円以下又は300人以下 |
卸売業 | 1億円以下又は100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下又は100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下又は50人以下 |
飲食業 | 5,000万円以下又は50人以下 |
大企業が出資総額の2分の1以上を所有または出資している場合や、役員総数の2分の1以上を大企業の役員または職員が兼務している場合は、大企業が実質的に経営に参画していると見なされ、申請要件を満たしません。
申請要件2. 登記の場所(法人の場合)や納税地(個人事業者の場合)が都内にあること
個人事業者の場合は納税地が都内にあることが要件に定められています。
法人の場合は対象事業の実施場所によって条件が以下の通りに分かれています。都外の実施場所についても全て県が対象となっているわけではなく首都圏(関東地方+山梨県)のみとなっていることに注意しましょう。
実施場所 | 条件 |
東京都内 | 申請受付開始日時点で東京都内に登記簿上の本店又は支店があること |
東京都外(神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県に所在すること) | 申請受付開始日時点で東京都内に登記簿上の本店があること |
<POINT>
登記簿上の本店が東京都内に登録されていれば、実施場所は東京都外(神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県)でも可能です。
申請要件3. 売上高が減少している(または減少見込みである)、あるいは直近決算で損失が計上されていること
申請受付開始日時点で売上高について下記の3項目のいずれかに該当することが要件です。
- 直近決算期の売上高が「2023年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較して減少していること
- 直近決算期において損失を計上していること
- 米国関税措置による影響により、次期決算期の売上高が、直近決算期の売上高と比較して減少することを見込んでいること
2023年決算期とは、2023年1月から12月に決算月が属する決算期を指します。
(例)
・決算月が12月の場合:2023年1月~12月
・決算月が3月の場合:2022年4月~2023年3月
また、直近の決算期が2024年の場合、下記のいずれかを満たすと要件に該当します。
- 売上高が2023年の決算期と比較して減少している
- 2024年の決算期で損失を計上している場合
申請要件4. 同一のテーマで他の助成金を受けていない(申請中も不可)、かつ、本制度と同等の制度で過去に1度も交付決定を受けていないこと
本制度(=事業環境変化に対応した経営基盤強化事業)の小規模事業者向けアシストコースと一般コースを並行して申請することはできません。
また同一のテーマ・内容で本制度以外の助成を公社、国、都道府県、市町村などから助成を受けている場合や他の助成事業に申請している場合もこれに含まれます。しかし、過去に申請していても採択されていない場合は、申請可能です。
また、本制度(経営基盤強化事業(一般コース))で一度でも交付決定を受けた場合や、本制度の前身である「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」で交付決定を受けていると申請ができません。
申請要件5. 暴力団、風俗営業など社会通念上適切でないと判断される業態でないこと
下記のように支援の対象として社会通念上適切でないと判断される業態の場合は申請できません。
- 暴力団関係者
- 風俗関連業、ギャンブル業、賭博等
- 連鎖取引販売や送り付け商法、催眠商法、霊感商法
申請要件6. 申請に必要な書類をすべて提出できること
申請時の提出書類は申請書と誓約書のみですが、書類審査通過後には下記の書類の提出が求められます。
必要書類 | 入手先等 | 対象申請者 | |
法人 | 個人 | ||
履歴事項全部証明書 | 法務局 | ○ | |
開業届 | 各自 | ○ | |
法人事業税納税証明書 | 都税事務所 | ○ | |
個人事業税納税証明書 | 都税事務所 | ○ | |
所得税納税証明書(その1) | 所管税務署 | ○ (※非課税の方のみ) | |
法人都民税納税証明書 | 都税事務所 | ○ | |
住民税納税証明書 | 市区町村役所 | ○ | |
住民税非課税証明書 | 市区町村役所 | ○ (※非課税の方のみ) | |
決算書(損益計算書) | 各自 | ○ | |
所得税確定申告書(第一表、収支内訳書または青色申告決算書) | 各自 | ○ |
上記のほかに、必要に応じて見積書やカタログ、図面など申請内容の詳細が確認できる書類の提出が求められる場合もあります。
また、「賃金引上げ計画」の申請をおこなう場合には別に賃金引上げ計画書などの提出が必要です。
経営基盤強化事業(一般コース)の助成率と助成限度額
経営基盤強化事業(一般コース)の助成額は1件あたり最大800万円です。
また、助成金額は助成対象の経費ごとに助成率の3分の2をかけて計算します。
なお、賃金引上げ計画を策定・実施した場合、助成率は中小企業者で3/4、小規模企業者は4/5となります(※1/※2)
賃金引上げ計画の申請は別途、賃金引上げ計画書を策定し、実行しなければなりません。
※1 小規模企業者は、中小企業者のうち、以下に該当するものをいいます。
業 種 | 常時使用する従業員 |
製造業・その他 | 20人以下 |
卸売業・小売業・サービス業 | 5人以下 |
※2 賃金引上げ計画は簡単に言うと、助成対象事業が完了した翌月からの1年間において、①補助事業を行う場所での最低賃金を地域の最低賃金よりも30円以上高く設定しつつ、②過去1年間よりも2%以上給与等を増加させることを含んだ計画のことです。
仮に、600万円の設備を導入し、外部委託費が100万円かかったとして、助成額がいくらになるか見てみましょう。
経費が最大限度額の800万円に到達していないため、経費に助成率2/3をかけます。
700万円×2/3=466万6,000円 (千円未満は切り捨て)
賃金引上げ計画を策定・実施した場合には下記の計算になります。
(中小企業者)700万円×3/4=525万円
(小規模企業者)700万円×4/5=560万円
上記の計算はあくまで目安で、実際の交付金額では申請後の検査が完了した時点で決定します。
助成対象の経費
経営環境変化に対応した経営基盤強化事業の助成対象は下記のとおりです。
- 原材料・副資材費
- 機械装置・工具器具費
- 委託・外注費 ※一部、条件あり
- 産業財産権出願・導入費
- 規格等認証・登録費
- 設備等導入費
- システム等導入費
- 専門家指導費 ※この項目単独での申請は不可
- 不動産賃借料
- 販売促進費 ※この項目単独での申請は不可
- その他経費 ※この項目単独での申請は不可
助成対象となるのは、既存事業を深化・発展させるために必要であり、公社による審査で認められた経費に限られます。
また、「販売促進費」は200万円、「その他経費」は100万円が上限です。また、販売促進費について、既存事業に係る販売促進については対象外となっています。
経営基盤強化事業(一般コース)の申請期間
令和7年(2025年)度の経営基盤強化事業(一般コース)は下記の6回を予定しており、それぞれの申請期間は以下のようになっています。
募集回 | 申請受付期間 |
第1回 | 令和7年5月2日~5月14日 |
第2回 | 令和7年7月1日~7月14日 |
第3回 | 令和7年9月1日~9月12日 |
第4回 | 令和7年11月4日~11月14日 |
第5回 | 令和8年1月5日~1月14日 |
第6回 | 令和8年3月2日~3月13日 |
申請から交付決定までの所要期間は約3カ月です。
なお、上記の受付期間は令和7年6月時点に確認した予定であり、予算の都合等により募集予定は変更される場合があります。
申請前には公式サイトより申請受付期間を確認してください。
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)の注意点
下記の3点について申請前に確認しましょう。
- 同一のテーマで他の助成金を受けていない(申請中も不可)、かつ、本制度と同等の制度で過去に1度も交付決定を受けていないこと
- 単独申請不可・対象外の経費がある
- 助成対象期間が限られる
それぞれの注意点について解説します。
同一のテーマで他の助成金を受けていない(申請中も不可)、かつ、本制度と同等の制度で過去に1度も交付決定を受けていないこと
下記の事業へ申請中または交付決定を受けた場合には、申請できません。
- 本事業(本コース及び小規模事業者向けアシストコース)
- 新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業(経営改善計画策定による経営基盤強化支援(一般コース))
上記の他にも同一のテーマ・内容での申請予定または申請中、交付予定の助成金がある場合には申請できません。
ただし、過去に申請していても採択されていない場合は申請が可能です。
単独申請不可・対象外の経費がある
対象経費である委託・外注費のうち、下記の項目については単独で申請できません。
- 市場調査費
- 専門家指導費
- 販売促進費
- その他経費
また、既存事業に係る販売促進にかかる経費は助成の対象外です。
このほか、助成対象の経費ごとに対象外になる基準が設定されていることがあります。
申請予定の経費がある場合は公式の募集要項から確認しましょう。
助成対象期間が1年以内に限られる
交付決定日から1年以内に契約・実施・支払いが完了する経費が助成対象となります。
交付が決定する前に発注・契約をした場合や、発注遅れにより納品・支払いが1年(対象期間)を超える場合は対象外です。
また、クレジットカードで支払い、引き落とし日が対象期間を超えてしまう場合も対象外になります。
引き落とし日はカード利用の翌月となるケースが多いため、助成期間内に支払いが完了するよう注意しましょう。
まとめ|事業環境変化に対応した経営基盤強化事業を活用しよう
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業は、事業の質向上やさらなる発展に、ぜひ活用したい制度の一つです。
しかし、申請に必要な書類が多いことや対象となる経費が限定されていることでハードルが高く感じられるかもしれません。
まずは構想中の計画がこの助成事業の対象となるのか、お気軽にご相談ください。