
【都内の中小企業向け】経営基盤強化事業(一般コース)の
申請から交付までの流れを解説
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)は、経営の基盤強化のために、事業を深化または発展させる取り組みを支援する東京都の補助金制度です。
本記事では、経営基盤強化事業(一般コース)の申請方法と交付決定後、助成金が交付されるまでの流れを解説します。
なお、経営基盤強化事業(一般コース)の概要や申請要件については「【都内の中小企業向け】事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)とは?わかりやすく解説」で紹介していますので参照ください。
経営基盤強化事業(一般コース)の申請~交付の流れ
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)の申請から交付までの大まかな流れは下表のとおりです。

申請から交付決定までの期間は3カ月程度を見込んでおきましょう。
また、助成事業の実績報告から交付額の決定まで1カ月程度、さらに請求から支払いまでに1カ月程度かかります。
申請書類・提出書類の用意
申請には下記の書類を提出しなければなりません。提出するタイミングは2回に分かれているため、どの段階でどの書類が必要なのかを確認しておきましょう。
申請時は申請書と誓約書2枚のみでよいというのは押さえておきましょう。ただし、申請様式は(1)申請者自身に関する情報、(2)事業計画、(3)資金支出計画に関する詳細の3つのパートに分かれており、ボリュームがあるため時間をかけて準備するようにしましょう。
提出時期 | 必要書類 | 入手先 | 対象申請者 | |
---|---|---|---|---|
法人 | 個人 | |||
申請時 | 申請様式 | 公社HP | 〇 | 〇 |
誓約書(2枚:反社会的勢力排除に関する誓約書&助成金申請に関する誓約書) | 公社HP | 〇 | 〇 | |
書類審査通過後 | 履歴事項全部証明書 | 法務局 | 〇 | ー |
開業届 | 各自 | ー | 〇 | |
法人事業税納税証明書 | 都税事務所 | 〇 | ー | |
個人事業税納税証明書 | 都税事務所 | ー | 〇 | |
所得税納税証明書(その1) | 所管税務署 | ー | 〇 (※非課税の方のみ) | |
法人都民税納税証明書 | 都税事務所 | 〇 | ー | |
住民税納税証明書 | 市区町村役所 | ー | 〇 | |
住民税非課税証明書 | 市区町村役所 | ー | 〇 | |
決算書(損益計算書) | 各自 | 〇 | ー | |
所得税確定申告書 (第一表、収支内訳書または青色申告決算書) | 各自 | ー | 〇 | |
賃金引上げ計画書 | 公社HP | 〇 (※賃金引上げ計画書を申請する場合のみ) | ー | |
賃金台帳の写し (※賃金引上げ計画を申請する場合のみ) | 各自 | 〇 (※賃金引上げ計画書を申請する場合のみ) | ー |
賃金引上げ計画を申請する場合
賃金引上げ計画を申請する場合は、助成率を2/3から3/4(※中小企業の場合。小規模企業者は4/5)に引き上げることができますが、賃金引上げ計画は、下記の1、2の項目をどちらも満たす必要があります。
- 賃金引上げ計画の期間内に支払う給与総支給額が、基準日(※)が属する月の前月から遡った12カ月間に全従業員に支払った給与などの支給額に1.02をかけた額以上に増加させていること。(2%以上の賃上げを実施すること)
- 助成事業実施場所内の最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上の水準にしていること。
全従業員への総支給額には非常勤(※)も含まれ、役員は除きます。
また、賃金台帳の写しは、基準日が属する月の前月から遡る12カ月間の全従業員分のデータが必要です。
※「基準日」とは第1回、第2回の募集では令和7年4月1日に設定されていましたが、東京都中小企業振興公社へ問い合わせたところ、第3回以降は基準日が変更される可能性もあるとのことでしたので、賃金引上げ計画を予定している場合は、最新の要項で基準日を確認しましょう。
※非常勤とは雇用形態(アルバイト・パート・日雇いなど)や勤務時間・日数に関わらず、直接雇用関係を結び、解雇する場合には事前通告を必要とする従業員をすべて含みます。なお、派遣社員は直接雇用の関係にないため、対象には含まれません。
経営基盤強化事業への申請方法
経営基盤強化事業への申請は以下の手順で進めます。
- GビズID(プライムアカウント)・jGrants(Jグランツ)に登録
- 申請書類・提出書類の準備
- jGrantsに必要事項を入力、申請書類および必要書類をアップロード
- 申請状況の確認・面接審査
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
①GビズID(プライムアカウント)・ jGrants(Jグランツ)に登録
まず、事業者向け共通認証システム「GビズID」へのアカウント登録をして、補助金ポータルサイト「jGrants(Jグランツ)」にログインします。
経営基盤強化事業は電子申請のみ受け付けているため、サイトへのアカウント登録は必須です。
GビズIDは書類郵送とオンライン申請の2パターンで登録ができます。
3種類のタイプに分かれていますが、jGrantsを利用するには「GビズIDプライム」アカウントへ登録してください。
GビズIDへ登録できたら、jGrantsへログインします。
公式サイトトップページの右上「ログイン」から、「GビズIDでログインする」へ進みます。

ログイン後のトップページのボタンもしくはメインメニュー欄から「補助金を探す」を選択し、検索ウィンドウに「事業環境変化」を入力し、検索します。


「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業 助成金(一般コース)【令和7年度第〇回】」と表示されているのを選択し、次のステップへ進みましょう。

② 申請書類の準備
GビズIDへの登録、jGrantsへのログインと並行して、申請書類・提出書類の準備を進めます。
jGrantsから申請する際には、申請様式と誓約書(2枚)を提出します。
なお、書類審査通過後には必要に応じて見積書や図面などの提出が求められるため、設備導入に関わるカタログや見積書などは必ず保管しておきましょう。
③ jGrantsに必要事項を入力、申請書類をアップロード
GビズIDの登録、jGrantsへのログイン、申請書類の用意ができたら、申請へ進みます。
jGrantsの補助金検索画面で検索した「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業 助成金(一般コース)【令和7年度第〇回】」をクリックすると助成金の説明ページに移ります。説明ページの下部にある「申請する」のボタンをクリックし、申請ページに入ったら必要事項を入力しましょう。

必要事項を入力した後、申請書類(申請様式・誓約書2枚)をアップロードします。
同意事項を読み、「はい」をクリックし、「申請する」を押すと申請完了です。申請後に書類が不足していたり誤っていても取り消しができず、不採択になってしまうため、必要書類を全てアップロードできているかを確認してから「申請する」を押すようにしましょう。
なお、入力中「一時保存する」を押すと、入力情報が保存されます。万が一接続エラーを起こした場合に、はじめから入力し直さなければならないため、都度保存しておくと安全です。
④ 申請状況の確認・面接審査
jGrantsのマイページにある「申請履歴」から申請中の補助金名と手続き状況を確認できます。
申込履歴にある「タイトルなし」をクリックし、「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業 助成金(一般コース)【令和7年度第〇回】へ進むと表示されます。

書類審査に通過すると、さらに「申請フォームの入力」「申請フォームでの申請」へ進みます。
申請フォームの入力および申請は書類審査通過者にURLが案内される流れです。
申請書類は下記の視点で確認されます。
- 申請要件を満たしているか
- 提出書類に不備・不足等はないか
- 申請された経費が助成対象となるか
申請書類を適切に入力できていない場合、申請内容にかかわらず審査に悪影響を及ぼすことがあるため、申請前には特に注意しましょう。
専門家による書類審査のポイント
書類の提出後におこなわれる、専門家による書類審査は、下記の視点で確認されます。
- 発展性:既存事業の進化・発展に資する取組か
- 市場性:ポストコロナ等における事業環境の変化前後の市場分析は十分か
- 実現性:取り組むための体制は整っているか
- 優秀性:事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか
- 自己分析力:自社の状況を適切に理解しているか
審査の結果、一定水準に到達しないと判断されると、申請は不採択となります。
専門家との面接審査のポイント
書類審査通過後には専門家との面接審査があります。
面接審査は事業者の代表者、役員もしくは従業員で最大2名まで出席可能です。
顧問や経営コンサルタントが同席したり、代理出席したりすることはできません。
また面接会場へは録音ができる機器や撮影機器、デジタルカメラ、パソコンなどの持ち込みも禁止です。
各募集回において面接期間が設定されており、書類審査通過後に面接日を指定されます。
面接日の変更ができないため、面接開催期間はいつでも対応できるように、あらかじめスケジュールを予定しておきましょう。
面接審査においても、書類審査と同じ視点で審査されます。
面接審査を受けても、一定水準に到達しないと判断された場合には、不採択となります。
(画像引用元:令和7年度 事業環境変化に対応した経営基盤強化事業助成金(一般コース) 電子申請マニュアル)
交付決定後の流れ
申請が採択されたら、下記の流れで交付まで進みます。
- 助成事業の実施
- 実績報告
- 完了検査
- 助成金交付額の決定
- 助成金の交付
それぞれの段階について確認しましょう。
①助成事業の実施
交付対象となる事業(取り組み)の契約および実施へ進みましょう。
助成対象期間は交付決定日から1年間となっているため、期間中に契約と事業の実施、支払いまでが完了するよう計画を立てましょう。
助成対象となる経費の支払いは原則、振込払いと定められているため、事業の契約・支払いにおいても振込支払いの方が望ましいです。
②実績報告
助成事業の完了後、1カ月以内に実績報告をおこないます。
実績報告には経理関係の書類と履歴事項の確認ができる書類の2種類の書類提出が必要です。
経理関係には主に下記の書類をそろえます。
- 契約書または発注書と請書
- 納品書等
- 請求書
- 振込控
- クレジットカード利用明細
- 領収書
- 通帳または当座勘定照合表
また、履歴確認ができる書類とは購入品のカタログや委託契約書の写しなど、経費区分によって様々です。
経費区分によって必要書類が異なるため、要項で確認しておきましょう。
③完了検査
実績報告後に完了検査をおこないます。
完了検査では実績報告時の提出書類にもとづき、助成事業の実施が適正か、購入物や経理関係の書類とともに確認します。
検査時に購入物や経理関係書類が確認できない場合には、助成対象の経費であっても助成対象外となってしまう可能性があります。
書類の確認後には助成事業の実施場所(または公社の指定場所)で購入物や工事などの現地確認がおこなわれます。
経理関係書類の原本との照合もあるため、提出書類の原本を用意しておきましょう。
④助成金交付額の決定
完了検査が完了したら、実績報告を審査し、助成金交付額が確定します。
交付額は「助成金確定通知書」という形で通知されます。
交付額は実績にもとづいて決定されるため、当初の交付決定額から減額されることがあります。
⑤助成金の交付
助成金確定通知書が届いたら、公社指定様式の「助成金請求書」を提出します。
指定した金融機関口座に助成金が振り込まれます。
なお、助成対象期間を過ぎてしまうと、助成金の支払いができない場合があるため、注意してください。
経営基盤強化事業の2025年(令和7年)の申請時期
2025年度の事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)の申請期間は下記の6回です。
募集回 | 申請受付期間 |
---|---|
第1回 | 令和7年5月2日~5月14日 ※受付終了 |
第2回 | 令和7年7月1日~7月14日 ※受付終了 |
第3回 | 令和7年9月1日~9月12日 |
第4回 | 令和7年11月4日~11月14日 |
第5回 | 令和8年1月5日~1月14日 |
第6回 | 令和8年3月2日~3月13日 |
予算の都合などにより、予告なく募集予定が変更される場合があります。申請を考えている方は、最新情報を確認したうえで早めの申請手続きをおすすめします。
まとめ
事業環境変化に対応した経営基盤強化(一般コース)は、補助対象が広く、中小企業の事業を強化していく視点では心強い補助金制度です。
対象の取り組みにかかる経費の2/3(最大800万円)と高い補助率で、自己負担を抑えて経営強化を図れます。
しかし、提出書類や対象となる経費区分を正しく理解して申請していないと、助成対象となる取り組みをしていても、不受理になるリスクもあります。
申請に不安がある場合には、スムーズに進めるためにも専門家のサポートを受けることもおすすめです。
当事務所では経営基盤強化事業に限定せず、幅広く補助金や融資のサポートをおこなっています。「自分がどの補助金を受けられるのか分からない」といった場合でも、まずはお気軽にご相談ください。
なお、経営基盤強化事業(一般コース)の概要や申請要件については「【都内の中小企業向け】事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)とは?わかりやすく解説」で紹介していますので参照ください。