これまで事業者に広く活用されていたIT導入補助金ですが、2026年から「デジタル化・AI導入補助金」に名前が変更されています。以下ではデジタル化・AI導入補助金の概要と申請・審査の注意点について説明します。

※こちらの記事は、2026年8月28日に改訂された「デジタル化・AI導入補助金2026」の公募要領(通常枠・インボイス枠)に基づいて記載しています。通常枠・インボイス枠の次回(5次)締切は2026年9月29日(火)17:00、交付決定日は2026年11月9日(月)の予定です。

デジタル化・AI導入補助金の概要

概要

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。

対象者

中小企業・小規模事業者等が対象(個人事業主を含む)です。会社・個人事業主のほか、医療法人、社会福祉法人、学校法人、一定の組合なども対象になります。小規模事業者は下記のように定義されています。業種や組織形態ごとに資本金や従業員数の要件があるため、詳細は公募要領をご確認ください。

<小規模事業者>

業種常時使用する従業員の数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

補助金の類型

2026年は、以下の5つの枠・類型があります。

類型概要
通常枠自社の課題にあったITツールを導入し、業務効率化・売上アップ等を支援
インボイス枠
(インボイス対応類型)
インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェア等を導入し労働生産性の向上を支援
インボイス枠
(電子取引類型)
大企業を含む発注者が、費用を負担してインボイス対応済の受発注ソフトを導入し、受注者である中小企業·小規模事業者等が無償で利用できるケースを支援
セキュリティ対策推進枠サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスクに対処するため、サイバーインシデントに関する様々なリスク低減策を支援
複数者連携デジタル化・AI導入枠商店街等、複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールを導入し、生産性の向上を図る取り組みを支援

下記にデジタル化・AI導入補助金2026の1次~3次締切分の申請数と交付決定数を記載しますが、IT導入補助金の時代と同様に、全体の99%以上の申請を通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)が占めています。そのため、以下では主にこの2つの枠について解説します。

(参考)直近の類型ごとの申請数など

交付決定日締切申請類型申請数交付決定数
2026年6月18日1次締切分通常枠2,028891
インボイス枠(インボイス対応類型)4,3242,027
インボイス枠(電子取引類型)00
セキュリティ対策推進枠8864
2026年7月23日1次締切分複数者連携デジタル化・AI導入枠21
2次締切分通常枠1,879819
インボイス枠(インボイス対応類型)3,7902,096
インボイス枠(電子取引類型)00
セキュリティ対策推進枠2820
2026年9月2日3次締切分通常枠1,913807
インボイス枠(インボイス対応類型)3,9821,781
インボイス枠(電子取引類型)00
セキュリティ対策推進枠1813

出典:デジタル化・AI導入補助金2026事務局「交付決定事業者一覧」(申請数および交付決定数、2026年9月2日更新)

補助率・補助上限額

通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)が主な検討対象となると思われるのでこの2つに絞って記載します。

類型対象経費補助率補助額
通常枠・ソフトウェア購入費
・クラウド利用費(最大2年分)
・導入関連費
1/2以内
(最低賃金近傍の従業員が一定割合以上いる事業者は2/3以内(※))
・5万円~150万円未満:1プロセス以上
・150万円~450万円以下:4プロセス以上
インボイス枠
(インボイス対応類型)
・ソフトウェア購入費
・クラウド利用費(最大2年分)
・導入関連費
・ハードウェア関連費
補助額50万円以下の部分:3/4以内
(小規模事業者は4/5以内)
補助額50万円超の部分:2/3以内
PC・タブレット等、レジ・券売機:1/2以内
・ITツール(会計・受発注・決済のうち1機能):~50万円
・ITツール(同2機能以上):~350万円
・PC/タブレット等:~10万円
・レジ/券売機:~20万円
※PC・レジ等のハードウェアは対象ソフトウェアとあわせて導入する場合に限る(POSレジ等は決済機能を有するソフトウェアが必要)

通常枠、インボイス枠のどちらについても、ソフトウェア購入費やクラウド利用費に加えて「導入関連費」も補助対象となっています。対象となる具体的な費用はIT導入支援事業者とあわせて公募要領で確認しましょう。

また、通常枠の補助率は基本的に2分の1ですが、最低賃金近傍の従業員が一定割合以上いる事業者(※)は補助率が2/3に引き上げられています。

※令和6年10月から令和7年9月の間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業
員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある事業者

デジタル化・AI導入補助金の申請の流れ

申請の流れ

申請の流れは下記のようになっています。

デジタル化・AI導入補助金の申請手続きフロー図

出典:新規申請・手続きフロー詳細 | デジタル化・AI導入補助金2026

申請の注意点

まず、申請は電子申請のみとなっており、申請には「GビズIDプライム」のアカウント取得が必要であるため、できるだけ事前にGビズIDアカウントの取得手続きを行った方がよいです(事務局サイトでは発行までおおむね2週間とされています)。

中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度である、SECURITY ACTION(「★一つ星」または「★★二つ星」)を宣言することがデジタル化・AI導入補助金の申請の際の必須要件となっているためこちらも忘れずに対応しましょう。詳細はSECURITY ACTION セキュリティ対策自己宣言をご確認ください。

デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者と共同して申請することになりますが、自らの事業規模に合ったITツールを導入するようにしましょう。補助金が出るからといって不要なツールを導入しないように気を付けましょう。また、補助金の交付が決定する前に、発注や契約、支払いを実施してしまうと、補助金を受け取る資格を失ってしまうため、補助金交付が決まった後にITツールの契約や導入作業を開始する点に注意しましょう。

審査の流れとポイント

主な審査項目

通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)の主な審査項目および審査事項は以下です。

類型審査項目審査事項
通常枠事業面からの審査項目
(事業面の具体的な審査)
・自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか
・自社の状況や課題分析及び将来計画に対し、改善すべきプロセスが導入する「ITツール」の機能により期待される導入効果とマッチしているか
・内部プロセスの高度化、効率化及びデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか
・セキュリティ対策を進めているか
(計画目標値の審査)・労働生産性の向上率
政策面からの審査項目・生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか
・国の推進するセキュリティサービスを選定しているか
・加点項目にある賃上げに取り組んでいるか
インボイス枠
(インボイス対応類型)
事業面からの審査項目・自社がインボイス制度に対応することに加え、生産性向上にもつながる効果的なITツールを導入しているか
・自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか
・セキュリティ対策を進めているか
政策面からの審査項目・生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか
・国の推進するセキュリティサービスを選定しているか
・加点項目にある賃上げに取り組んでいるか

加点項目

以下が、2026年8月28日改訂版の公募要領に記載されている加点項目です(通常枠は15項目、インボイス枠は13項目)。ハイライトした加点項目については積極的に狙うべきですが、賃上げに関する加点を受けて採択されたにもかかわらず要件を達成できなかった場合は、効果報告で未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する他の補助金の審査で大幅に減点されます。また、賃金引上げ計画を従業員に表明したと申告したのに実際には表明していなかった場合は、交付決定が取り消されます。

なお、賃上げの一部は加点ではなく申請の必須要件です。通常枠で補助金申請額150万円以上の場合は、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3%(IT導入補助金2022~2025で交付決定を受けた事業者は3.5%)以上・事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上・賃金引上げ計画の従業員への表明が必須となり、事業場内最低賃金を+50円以上にする場合に加点されます。また、IT導入補助金2022~2025で交付決定を受けたことがある事業者は、補助金申請額150万円未満の通常枠やインボイス枠でも、給与支給総額3.5%以上と従業員への表明が必須です(2026年3月6日の改訂で明確化)。必須要件について効果報告で未達が確認されると、補助金の全部または一部の返還を求められます。

番号加点項目通常枠インボイス枠
(インボイス対応類型)
1導入するITツールとしてクラウド製品を選定していること○―
2導入するITツールとして「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定していること○○
3導入するITツールとしてインボイス制度対応製品を選定していること○―
4導入するITツールとして、決済機能を有するクラウド製品を選定していること―第2回公募回のみ
5導入するITツールとして「スマートレジ」を選定していること(インボイス枠では特に重視)―○
(第3回公募回から)
6交付申請時点までに、デジタル化セカンドオピニオンの取組みを実施していること(確認者との面談完了後に交付申請)○
(第3回公募回から)
―
7賃金引上げ計画:交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画を策定・実行し、①事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上、②1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率を3%(IT導入補助金2022~2025で交付決定を受けた事業者は3.5%)以上、③交付申請時点で賃金引上げ計画を従業員に表明(通常枠は補助金申請額150万円未満の場合)
※事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上にした場合は更に加点
○○
8賃金引上げ計画(通常枠・補助金申請額150万円以上):事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にすること(給与支給総額の成長率・事業場内最低賃金+30円以上・従業員への表明は申請の必須要件)○―
9交付申請日時点でインボイス登録を受けておらず、実績報告日までに登録して登録通知書を提出することを約束すること(交付申請日以前に登録済みだった場合や、実績報告日までに登録できなかった場合は原則として交付決定取消し)―○
10「デジwith」の「IT戦略ナビwith」を交付申請前に実施していること(通常枠は中小機構「IT経営サポートセンター」の利用でも可。第6回公募回から、2026年8月1日以降の利用申込が対象)○○
(IT戦略ナビwithのみ)
11令和7年度に「健康経営優良法人2026」に認定された事業者であること○○
12交付申請時点で、えるぼし認定(1~3段階目・プラチナえるぼし)またはくるみん認定(くるみん・トライくるみん・プラチナくるみん)を受けていること○○
13交付申請締切日時点で、中小企業庁「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録していること(課題のステータスが「掲載中」の場合のみ加点)○○
14交付申請締切日時点で、中小機構「省力化ナビ」を活用し、「解決策」のPDFをダウンロードしていること(申請に用いるGビズIDプライムを入力)○○
15令和6年10月から令和7年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上あること○○
16交付申請の直近月における事業場内最低賃金を、令和7年7月の事業場内最低賃金+63円以上の水準にしていること○○

※番号は本記事で整理したもので、公募要領上の番号とは異なります。通常枠の賃金引上げ計画(150万円未満)は、公募要領では交付決定歴の有無で2項目に分かれています。

また、IT導入補助金2022~2025で交付決定を受けた事業者や、デジタル化・AI導入補助金2026でもう一方の枠(通常枠ならインボイス枠、インボイス枠なら通常枠)に申請中または交付決定を受けた事業者などは審査で減点されます。これらの場合に、過去や他方の枠で選んだITツールと同じ機能(会計・受発注・決済)を持つITツールを導入すると、さらに減点されます。また、IT導入補助金2024・2025で交付決定を受けたソフトウェアとプロセスが重複する場合も減点され、プロセスが完全に一致する場合は不採択となる点に注意しましょう。

(参考)デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の採択率

通常枠の採択率の推移

下記が2025年のIT導入補助金(第1回~第8回)とデジタル化・AI導入補助金2026(1次~3次締切)の通常枠の採択率の推移です。2025年の後半は35%前後でしたが、2026年は1次43.9%・2次43.6%・3次42.2%と、40%台前半で推移しています。

デジタル化・AI導入補助金(通常枠)の申請数・採択件数・採択率の推移を示すグラフ(2025年第1回〜2026年3次締切)

インボイス枠(インボイス対応類型)の採択率の推移

下記はインボイス枠(インボイス対応類型)の採択率の推移です。2025年は45%前後で推移しており、2026年は1次46.9%・2次55.3%・3次44.7%となっています。

デジタル化・AI導入補助金(インボイス枠)の申請数・採択件数・採択率の推移を示すグラフ(2025年第1回〜2026年3次締切)

出典:2025年はIT導入補助金2025、2026年はデジタル化・AI導入補助金2026事務局の公表数値(申請数・交付決定数)をもとに当事務所で作成

まとめ

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者等のITツール導入を支援する補助金制度です。2025年のIT導入補助金では、通常枠・インボイス枠とも第1回の採択率が最も高くなっていました。ITツールの導入を検討している方は、早めに準備を進めて積極的に利用してみるとよいでしょう。活用の際は採択率を高めるために自社が取れそうな加点項目があるかどうかをあらかじめ検討し、できるだけ対応するようにしましょう。

参考