ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が取り組む革新的な製品・サービスの開発を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援するための補助金です。本記事ではその概要や申請方法、審査のポイントなどをわかりやすく解説します。

※下記は2025年2月14日に公表された第19回公募における内容をベースに記載しております。

ものづくり補助金の概要

概要

新規事業への挑戦を目指す中小企業の設備投資を促進するための補助金です。

対象者

対象者は中小企業者と小規模事業者(個人事業主を含む)です。ものづくり補助金という言葉から、製造業だけが対象というイメージを持つ方もいると思いますが幅広い業種が対象となっています。

以下に中小企業者と個人事業主の定義を記載しますが、条件を満たしていても大企業からの一定の出資を得ていたり直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えている場合など、実質的に大企業とみなされる場合は対象外となる点に注意しましょう。

<中小企業者>

資本金や常勤従業員数が下記に記載の数値以下の会社が対象です。他にも一定の組合等も対象になっていますので詳細は公募要領を確認ください。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
5,000万100人
小売業5,000万50人
ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万200人
その他の業種(上記以外)3億円300人

<小規模事業者>

下記を満たす会社と個人事業主が小規模事業者となります。

業種常時使用する従業員の数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

対象となる経費

以下が対象経費ですが、ものづくり補助金の申請のためには必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の機械設備・システム構築に対して投資を行う必要があります。

対象経費詳細
機械装置・システム構築費①機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
②専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
③改良・修繕又は据付けに要する経費
運搬費運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
技術導入費知的財産権等の導入に要する経費
知的財産権等関連経費特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用等
外注費新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の 一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
専門家経費本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
クラウドサービス利用費クラウドサービスの利用に関する経費
原材料費試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
海外旅費海外渡航及び宿泊等に要する経費
通訳・翻訳費通訳及び翻訳を依頼する場合に支払われる経費
広告宣伝・販売促進費海外展開に必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展等、ブランディング・プロモーションに係る経費

類型

2025年からのものづくり補助金では従来の省力化(オーダーメイド)枠がなくなり、下記の表に記載した2つの枠となっています。

なお、大幅な賃上げ(※)に取り組む事業者に対しては補助上限額を100~1,000万円上乗せされたり、最低賃金の引き上げに取り組む事業者(※)に対しては補助率が2/3に引き上げられる予定です。

(※)大幅な賃上げ:(1)給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加(2)事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準

(※)最低賃金の引き上げに取り組む事業者:一定期間において、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上である事業者

製品・サービス高付加価値化枠グローバル枠
要件革新的な新製品・新サービスの開発による高付加価値化海外事業の実施による国内の生産性向上     
補助上限
(カッコ内は大幅な賃上げを行うう場合)
従業員数
・5人以下:750万(850万)
・6-20人:1,000万(1,250万)
・21-50人:1,500万(2,500万)
・51人以上:2,500万(3,500万)
3,000万円(従業員数に応じて3,100万-4,000万)
補助率中小企業1/2、小規模2/3中小企業1/2、小規模2/3
補助対象経費<共通>機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
<グローバル枠のみ>海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費

ものづくり補助金の申請の流れと注意点

申請の流れ

下記が申請の流れの全体像になっています。

注意点

まず、申請は電子申請のみとなっており、申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要であるため、できるだけ事前にGビズIDアカウントの取得手続きを行った方がよいです。

交付決定以降に対象の経費を支出し始め、事業の実施期限までに補助対象事業が終了する必要があります。交付決定前に支出した経費については補助対象外なので注意しましょう。事業の実施期限は公募ごとに異なりますが、交付決定からおおよそ10カ月程度の期間で経費を使い切るイメージでよいと思います。

そして補助事業終了から起算して30日を経過した日、または、事業完了期限日のいずれか早い日までに実績報告書を提出する必要があります。こちらも余裕を持って対応するようにしましょう。

その後補助金の請求及び交付がありますが、最後に対応する事項があります。ものづくり補助金を活用した全ての補助事業者は、補助事業を終了した日が属する会計年度の終了後5年間にわたって、事業化状況報告にて報告をする必要があります。こちらの対応をもって補助金対応が終了となります。対応しないと、交付決定が取り消されたり、補助金の返還が求められたり、他の補助金の申請が制限されたり等、様々なペナルティがあるため必ず提出するようにしましょう。

なお、これまでは補助金を利用した事業を営んだ結果として一定の収益を得た場合は、「収益納付」という形で補助金を返還する義務が設けられていましたが、2025年の公募では収益納付は求められていません

審査の流れとポイント

書面審査の他、補助申請額が一定規模以上の場合は口頭審査もあります。

書面審査と加点項目

書面審査は技術面、事業化面、政策面の3つの視点で行われます。

審査項目製品・サービス高付加価値化枠グローバル枠
経営力・本事業により実現したい経営目標が具体化されているか。
・市場・顧客動向を始めとした外部環境と、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)等にかかる強み&弱みの内部環境を分析したうえで事業戦略が策定され、その中で、本事業が効果的に組み込まれているか。会社全体の売上高に対する本事業の売上高が高い水準となることが見込まれるか。
事業性・本事業により高い付加価値の創出や賃上げを実現する目標値が設定されており、かつその目標値の実現可能性が高い事業計画となっているか。
・本事業の課題が明確化され、課題に対する適切な解決方策が示されているか。
・本事業により提供される新製品・新サービスや海外需要開拓の対象となる市場の規模や動向の分析がされているか。当該市場は今後成長が見込まれるか。
・本事業により提供される新製品・新サービスや海外需要開拓が顧客に与える価値は何か。顧客ターゲットが明確か(顧客の特徴(属性・商圏等)が具体的に特定できているか)。顧客ニーズの調査・検証がされているか(対価を支払ってでも本事業により提供される新製品・新サービスを選択したいと考える顧客がどの程度存在するか)。本事業により提供される新製品・新サービスが顧客から選ばれる理由を理解しているか。
・本事業により提供される新製品・新サービスと競合する他社製品・サービスや代替製品・サービスに関する分析がされているか。競合する他社製品・サービスや代替製品・サービスに対して、本事業により提供される新製品・新サービスは差別化がされ、優位性を有しているか。
                                                               ・海外展開等に必要な実施体制や計画が明記されているか。また、海外事業に係る専門性を申請者の遂行能力又は外部専門家等の関与により有しているか。
・事前の十分な市場調査分析を行った上で、競争力の高い製品・サービス開発となっているか。
・国内の地域経済に寄与するものであるか。また、将来的に国内地域での新たな需要や雇用を創出する視点はあるか。
・ブランディング・プロモーション等の具体的なマーケティング戦略が事業計画書に含まれているか。
実現可能性          ・本事業に必要な技術力を有しているか。また、当該技術力が競合する他社と比較してより優位な技術力か。
・本事業に必要な社内外の体制(人材、専門的知見、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、本事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金調達が見込まれるか。
・本事業に必要な社内外の体制(人材、専門的知見、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、本事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金調達が見込まれるか。
・本事業は投入する補助金交付額等に対して、想定される売上・収益の規模等の費用対効果が高いか。また、本事業の内容と補助対象経費とが整合しており、費用対効果が明確に示されているか。
政策面・地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等や雇用に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。
・ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
・異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取り組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。また、事業承継を契機として新しい取り組みを行うなど経営資源の有効活動が期待できるか。
・先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施、経済社会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイノベーションを牽引し得るか。
・成長と分配の好循環を実現させるために有効な投資内容となっているか。
その他大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例の適用を狙う場合は以下も審査の対象
・大幅な賃上げの取組内容が具体的に示されており、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか。
・一時的な賃上げの計画となっておらず、将来に渡り、継続的に利益の増加等を人件費に充当しているか。また、人件費だけでなく、設備投資等に適切に充当し、企業の成長が見込めるか。
・将来に渡って企業が成長するため、従業員間の技能指導や外部開催の研修への参加、資格取得促進等、従業員の部門配置に応じた人材育成に取り組んでいるか。また、従業員の能力に応じた人事評価に取り組んでいるか。
・人事配置等の体制面、販売計画等の営業面の強化に取り組んでいるか。

また、加点項目は下記のようになっています。基本的にとれる加点項目はとりに行くべきだと思います。中でもコスパの高いパートナーシップ構築宣言、事業継続力強化計画の認定、成長加速化マッチングサービスに関する加点は必ず取るようにしましょう。

審査項目内容詳細
加点項目経営革新計画申請締切日時点で有効な「経営革新計画」の承認を取得している事業者
パートナーシップ構築宣言「パートナーシップ構築宣言ポータルサイト」において宣言を公表している事業者(応募締切日前日時点)。
再生事業者再生事業者の定義に該当する事業者
DX認定申請締切日時点で有効な「DX認定」を取得している事業者
健康経営優良法人認定「健康経営優良法人2025」に認定された事業者
技術情報管理認証申請締切日時点で有効な「技術情報管理認証」を取得している事業者
J-Startup
J-Startup 地域版
「J-Startup」、「J-Startup 地域版」に認定された事業者
新規輸出1万者支援プログラム(グローバル枠のみ)「新規輸出1万者支援プログラムポータルサイト」において登録が完了している事業者
事業継続力強化計画申請締切日時点で有効な「(連携)事業継続力強化計画」を取得している事業者
賃上げ補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、従業員及び役員の給与支給総額の年平均成長率を4.0%以上増加、並びに事業所内最低賃金を毎年3月、地域別最低賃金より+40円以上の水準を満たす目標値を設定し、設定した目標値を交付決定までに全ての従業員又は従業員代表者、役員に対して表明している事業者
被用者保険従業員規模50名以下の中小企業が被用者保険の任意適用(短時間労働者を被用者保険に加入させること)に取り組む場合
えるぼし認定「えるぼし認定」を取得している事業者
くるみん認定「くるみん認定」を取得している事業者
事業承継/M&A申請締切日を起点にして、過去3年以内に事業承継(株式譲渡等)により有機的一体としての経営資源(設備、従業員、顧客等)を引き継いだ事業者
成長加速化マッチングサービス申請締切日時点において、中小企業庁「成長加速化マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者
減点項目・申請締切日を起点にして、過去3年間に本補助金の交付決定を1回受けている事業者
・交付決定を受けて事業を実施したものの基本要件(給与支給総額増加要件、最低賃金水準要件)を達成できなかった事業者
・中小企業庁が所管する補助金において、賃上げに関する加点を受けたうえで採択されたにもかかわらず、申請した加点項目要件を達成できなかった場合

口頭審査

口頭審査は補助申請額が一定規模以上の申請を行う事業者を対象にオンラインにて実施するとされていますが、いくら以上かについて明確な記載はありません。

口頭審査は約15分と短く、事業者が主体的に申請に携わっていれば難易度は高くないです。ですが、コンサルなどに丸投げし内容を把握していない場合などは質問に対して的確に答えられない可能性があるため、申請内容については事前に一通り頭に入れておくようにしましょう。また、口頭審査に参加しない場合は不採択となってしまうため頭審査の案内が来たら必ず参加するようにしましょう。

(参考)ものづくり補助金の採択率の推移

下記がこれまでの採択率の推移です。直近は40%程度になっていることがわかると思います。

まとめ

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的な製品・サービスの開発を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援する補助金であり、今後も継続が予定されています。一定の投資を予定している事業者は補助金の概要を理解し、公募が発表されたときにすぐに対応できるように準備しておくとよいでしょう。

一方で細かい申請条件やポイントについて全体を把握することはなかなか難しいため、専門家に任せることを検討してもよいと思います。当事務所においてもものづくり補助金に関する申請のサポートを行っておりますので、ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。