
経営者保証に関するガイドラインとその活用法
経営者保証ガイドラインは、中小企業の経営を取り巻く重要なテーマです。本記事では、このガイドラインの趣旨と経営者保証を外す方法について解説します。
経営者保証に関するガイドラインとは何か
ガイドラインの目的と背景
経営者保証ガイドラインとは、中小企業の経営者が、事業の失敗によって生じる借金の返済責任から個人資産を守るための指針です。2012年に金融庁が策定し、その後、中小企業金融円滑化法に基づき、金融機関に対して、経営者保証のあり方について具体的な指針を示すようになりました。
経営者保証の現状
従来、中小企業が銀行から融資を受ける際には、経営者が個人保証を提供することが一般的でした。これは、中小企業の財務体質が脆弱な場合、事業が失敗した場合に、銀行が貸し出した資金を回収するために、経営者の個人資産を担保とする必要があったためです。しかし、経営者保証に関するガイドラインは、経営者を過剰な責任から解放し、事業の失敗によるリスクを軽減することで、中小企業の活性化を促進することを目的としています。
導入による影響
経営者保証に関するガイドラインの導入により、経営者は、事業の失敗によるリスクを軽減し、安心して事業に取り組むことができるようになりました。
一方でガイドラインは、「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」と位置付けられており、法的な拘束力はありません。実際に経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は、金融機関にゆだねられています。そのためガイドラインの設定から10年以上がたちますが、現時点において融資に経営者保証がついている経営者が多いと思います。
次は経営者保証を外す方法についてみていきましょう。
経営者保証を外すための3つの要件
経営者保証に関するガイドラインには保証を外すための以下の3つの要件が記載されています。
①法人個人の一体性の解消
法人は「法的に権利義務等の人格が認められている組織」であるため、経営者個人とは別に考える必要があります。そのためオーナー企業であっても法人や法人資産を個人の利益のために利用することは避けなければなりません。例えば、事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付は行わない、個人として消費した費用(飲食代等)について法人の経費処理としない等の対応が必要です。
②財務基盤の強化
経営者保証がなくても十分に返済が可能であることを財務的に示していく必要があります。以下のようなポイントがガイドラインのQ&A(Q4-5)上で例示されています。
・業績が堅調で十分な利益(キャッシュフロー)を確保しており、内部留保も十分であること
・業績はやや不安定ではあるものの、業況の下振れリスクを勘案しても、内部留保が潤沢で借入金全額の返済が可能と判断し得ること
・内部留保は潤沢とは言えないものの、好業績が続いており、今後も借入を順調に返済し得るだけの利益(キャッシュフロー)を確保する可能性が高いこと
③財務状況の適時適切な情報開示
必要に応じて債権者(銀行)に対して情報開示を行い、債権者との間で経営の透明性を確保する必要があります。財務諸表の他に事業計画や資金繰り表等の情報を提出したり、期中においても定期的にコミュニケーションを行う体制を作っていくことが望ましいです。
外部専門家利用のすすめ
上記の3要件を満たしているかについては税理士等の外部専門家に検証してもらうことが望ましいとガイドラインのQ&Aにおいて記載されています。経営者保証のついた融資を持っており今後外していきたいと考えている経営者は顧問税理士に相談してみることをおすすめします。
経営者保証を外す際の金融機関とのコミュニケーション方法
新規の融資で経営者保証をつけたくない時
金融機関の担当者に対して「経営者保証を付けないでほしい」旨を事前に伝えるようにしましょう。経営者保証なしという前提で融資ができるかどうかを審査していただき、結果的に経営者保証が必須であるということであれば受け入れざるを得ませんが、その場合は将来外すために必要な要素が何か(記載した3つのポイントのどれに課題があるか)という点をヒアリングしていきましょう。
既存の融資から経営者保証を外したい時
経営者保証を外したい場合は企業側から金融機関の担当者に依頼をかける必要があります。金融機関にとっては外すメリットがないため、待っていても経営者保証を外す提案は受けられないと考えるべきです。
また、単に保証を外してくださいというお願いよりも、その時に必要な資金について改めて検討したうえで、経営者保証付きの既存の融資を経営者保証のない新規の融資へ借り換えてしまうことがコミュニケーション上スムーズだと思います。例えば、数年前に経営者保証付きで5,000万円借りて、今は3000万円の返済残高が残っているが、事業拡大のために1億借りたい場合に、3,000万の借入金を返済して経営者保証なしで1億借り直そうとするイメージです。銀行としては融資の金額が増えるのでメリットもあるため、経営者保証を外すことに対するコミュニケーションもスムーズにいく可能性があります。
もし断られてしまった場合は、将来外していくためにどうしたらよいかという部分をヒアリングしていくようにしましょう。
保証付き融資でも経営者保証は外せる?
保証付き融資とは、信用保証協会などの保証が付いた融資のことです。2024年3月15日、「保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする信用保証制度(事業者選択型経営者保証非提供制度)」が創設されました。これは新たに信用保証協会の保証つきで融資を受けるとき、保証料を上乗せすることで、経営者保証の提供を不要とする制度ですが、借り換えにも使えます。こちらを利用して経営者保証を外したい旨を金融機関の担当者に相談するとよいでしょう。
まとめ
経営者保証に関するガイドラインにより、経営者保証を外すための3つのポイント(①法人個人の一体性の解消、②財務基盤の強化、③財務状況の適時適切な情報開示)が明らかになりましたが、経営者保証をつけたくない場合や外したい場合は、企業側から金融機関にコミュニケーションをとる必要があります。
一方で、②の財務基盤の部分が弱いと外せない場合も多いのではと考えています。格付診断を含めた企業財務診断報告書(こちらを参照ください)を作成することができるため、経営者保証の解除に向けた財務基盤の強化についても相談可能です。ご興味のある方は当事務所までご連絡いただければと思います。