
【日本政策金融公庫の創業融資】
返済期間&据置期間の決め方を解説
創業融資を検討する際、多くの方が悩むのが「返済期間」と「据置期間」の設定です。資金繰りを安定させるうえで、無理のない期間設定はとても重要です。
この記事では、返済期間と据置期間の基本から、設定時の注意点、融資審査での評価ポイントまで、わかりやすく解説します。
なお、公庫の創業融資の全体概要については【創業者&起業家必見】日本政策金融公庫の創業融資の流れ&審査対策を徹底解説に記載していますので参照ください。
公庫の創業融資では返済期間と据置期間に上限がある
返済期間は設備資金で20年間、運転資金で10年間が制度上の上限
返済期間とは、融資を受けた金額を公庫に対して何年かけて返済していくかという期間です。日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)では、設備資金で最大20年、運転資金で最大10年が目安とされています。ただし、「廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方」の場合は運転資金の返済期間が最大15年に延長されます。
据置期間は資金使途を問わず5年間が制度上の上限
据置期間とは、融資を受けてから元本の返済を開始するまでの“猶予期間”のことです。設備資金か運転資金かによらず、5年間が最長の据置期間となっています。この期間中は利息の支払いだけで済むため、事業の立ち上げ時期に資金繰りに余裕をもたせることができます。
例えば据置期間1年、返済期間が5年の場合は、最初の1年間は利息の支払いのみ行い、2年目から6年目の5年間で融資金額を返済していくことになります。
(参考)実務的な上限に関する公庫担当者からのコメント
公式見解ではないためあくまで参考までですが、公庫担当者と話した際、「確かに制度上の上限はあるが、実務上の据置期間は基本的に1年、返済期間は資金使途に関わらず10年が基本的な上限であり、これを上回る際は合理的な理由が必要である」という点を伺ったことがありますのでこちらも参考とすべきでしょう。
返済期間は事業上の資金ニーズを踏まえて決定しよう
返済期間(据置期間を含む)が長いと利息負担が上がるが、財務健全性も高まる
返済期間を長く設定すれば、返済総額(利息込み)は増えるため、長期的にはコストが高くなる傾向があります。一方で毎月の返済額を抑えられるため、資金繰りに余裕ができ、財務健全性が高まります。特に立ち上げ当初の収益が読みにくい業種では返済期間を長くとることは合理的です。例えば下記のような場合は、返済期間や据置期間を長めに設定するとよいと思います。
- 開業後、売上が立ち上がるまでに時間がかかる業種(例:コンサル業など)
- 設備投資が先行して収益化までに期間を要する場合
- BtoB取引で入金までのリードタイムが長い場合
反対に返済期間を短く設定すれば、利息は押さえられますが、資金繰りとしては厳しくなることになります。自己資金に余裕がある場合や、すでに見込み顧客が多く売上が立ちやすいビジネスの場合などは短めに設定してもよいでしょう。
事業計画との整合性を考えて決定すべき
例えば返済期間を短めに取り毎月30万円返済することとした場合、事業計画上の利益がしばらくの間毎月25万しかなければ、非常に厳しい返済計画となってしまいます。月々の返済金額は審査担当者から見ても合理的である必要があるため、「事業計画上いくらの利益が見込めるのか」、「返済しても自分や家族の生活に支障がないか」等も検討したうえで、返済期間や据置期間を考えるとよいでしょう。短すぎでも長すぎでもなく、事業計画と整合した無理のない返済期間を設定することが、融資成功につながります。
公庫の返済シミュレーションを活用しよう
利息や元金の支払についてイメージをつかみたい方は公庫HP上の事業資金用返済シミュレーションを活用しましょう。融資希望額や想定金利を入れることで毎年の元金の返済金額や利息を計算することができます。
なお、シミュレーション画面にある、元金均等返済とは毎回の「元金」部分を同じ金額で返済する方法であり、最初は金利が多く返済額が大きいですが 徐々に利息が減って、返済額も減少していく形を指します。一方で元利均等返済は「元金+利息の合計」を同じ金額で返済する方法であり、返済額は常に一定(内訳として最初は利息多め⇒後半は元金多め)になります。
(参考)運転資金と設備資金がどちらもある場合は長期を希望する方に合わせて申請すればOK
例えば運転資金として100万、設備資金として400万の合計500万の融資を受けたい場合を考えてみましょう。もしあなたが「運転資金なら3年で返したいけど、設備もあるから10年がよいな」と思ったら、全体で10年を希望の返済期間として融資の申請を行えば問題ございません。
まとめ:事業計画に合わせて柔軟に設定しよう
返済期間と据置期間は、「長ければ財務的に安心」「短ければ早く返済できるので公庫に信頼される」といった単純な話ではありません。制度上の上限を認識したうえで、自社の事業計画との整合性をとりつつ、現実的な期間を設定することが大切です。
迷ったときは、専門家に相談するのもおすすめです。当事務所でも公庫からの創業融資の支援を行っていますので、是非お気軽にご相談ください。
なお、公庫の創業融資の全体概要については【創業者&起業家必見】日本政策金融公庫の創業融資の流れ&審査対策を徹底解説に記載していますので合わせて活用ください。