創業融資を検討している方にとって、日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資は非常に利用しやすい制度ですが、金利がどのくらいなのか気になる方は多いと思います。金利は返済総額に大きく影響するため、正しく理解し、できるだけ低く抑えることが重要です。本記事では、公庫の創業融資における金利の目安等について解説します。

なお、公庫の創業融資の全体概要については【創業者&起業家必見】日本政策金融公庫の創業融資の流れ&審査対策を徹底解説に記載していますのでご参照ください。

公庫の創業融資で設定されている金利の目安

公庫の創業融資の基準利率は2.7%-4.2%程度

下記が創業融資を利用した場合の基準利率(=融資を行うための基準となる金利)であり、創業からの期間にもよりますが無担保だと2.7%-4.2%程度が目安です。日銀の政策金利や市場金利の動向等によって変動するため、市場金利が引きあがれば公庫の基準金利も上がります。

なお、融資申請の際、申請フォーム上で担保提供を希望するかどうかを選択することができます。担保提供を希望する場合、金利を最大1%程度下げることが可能です。

【基準金利の目安:2025年7月1日現在】

対象基準利率
税務申告を2期終えている方2.7%-4.1%
税務申告を2期終えていない方2.8%-4.2%
(参考)有担保の方1.7%-3.7%

出典:金利情報|国民生活事業(主要利率一覧表)|日本政策金融公庫より抜粋

特別利率が適用されれば1.8%-3.8%程度

特定の条件を満たす方については、特別利率と呼ばれる、優遇された金利を適用することができます。創業からの期間にもよりますが無担保の場合は1.8%-3.8%程度のレンジになっています。

【特別利率の対象】

対象適用利率
1.女性の方、35歳未満または55歳以上の方特別利率A
ただし、次のいずれかに該当する方は特別利率B
・左記3に該当する女性の方
・左記3に該当する35歳未満の方
・左記5に該当する過疎地域で新たに事業を始める方
・左記6に該当する過疎地域で新たに事業を始める方
2.外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家の方で新たに事業を始める方
3.創業塾や創業セミナーなど(産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業)を受けて新たに事業を始める方
4.「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用しているまたは適用する予定の方であって、自ら事業計画書の策定を行い、認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)による指導および助言を受けている方
5.地域おこし協力隊の任期2年目以降の方または任期終了後1年以内の方であって、同隊として活動した地域で新たに事業を始める方
6.Uターン等により地方で新たに事業を始める方
7.日本ベンチャーキャピタル協会の会員(賛助会員を除く。)等または中小企業基盤整備機構もしくは産業革新投資機構が出資する投資事業有限責任組合等から出資を受けている方(見込まれる方を含む。)特別利率B
8.新しい地方経済・生活環境創生交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方
9.新しい地方経済・生活環境創生交付金を活用した起業支援金および移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方特別利率C
10.技術・ノウハウ等に新規性がみられる方特別利率A・B・C

出典:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫より抜粋

【特別金利の目安:2025年7月1日現在】

対象特別利率A特別利率B特別利率C
税務申告を2期終えている方2.3%-3.7%2.05%-3.45%1.8%-3.2%
税務申告を2期終えていない方2.4%-3.8%2.15%-3.55%1.9%-3.3%
(参考)有担保の方1.3%-3.3%1.05%-3.05%0.95%-2.8%

出典:金利情報|国民生活事業(主要利率一覧表)|日本政策金融公庫より抜粋

特例制度を利用すればさらに引き下げが可能

制度名対象者引き下げ利率
創業支援貸付利率特例制度新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方各融資制度に定める利率-0.65%
ただし、雇用の拡大を図る場合は、各融資制度に定める利率-0.9%
賃上げ貸付利率特例制度新たに事業を開始後3ヵ月以上の事業者であって、雇用者給与等支給額の総額が最近の決算期と比較して2.5%以上増加する見込みがある方各融資制度に定める利率-0.5%
(貸付日から2年間)

出典:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫より抜粋

また、法人での融資で経営者保証を外したい場合、最大0.3%の利率を上乗せすることで外すことができます。
経営者保証や担保等についての詳細は【日本政策金融公庫の創業融資】担保・連帯保証人・経営者保証なしで利用できる?で解説しているためご参照ください。

公庫の創業融資は固定金利

公庫の創業融資は原則固定金利です。民間の金融機関においては金利の変動リスクを負いたくないため原則的に変動金利であり、固定金利に変更しようとすると利率が上がることが多いです。公庫は政府系金融機関であるため、創業期の経営者に安定した資金計画を立ててほしいという思いから原則固定金利としていると思われます。

返済シミュレーションを活用しよう

融資を受けた場合の利息や元金の支払についてイメージをつかみたい方は公庫HP上の事業資金用返済シミュレーションを活用しましょう。融資希望額や想定金利を入れることで毎年の元金の返済金額や利息を計算することができます。

なお、シミュレーション画面にある、元金均等返済とは毎回の「元金」部分を同じ金額で返済する方法であり、最初は金利が多く返済額が大きいですが 徐々に利息が減って、返済額も減少していく形を指します。一方で元利均等返済は「元金+利息の合計」を同じ金額で返済する方法であり、返済額は常に一定(内訳として最初は利息多め⇒後半は元金多め)になります。

借入希望額については【日本政策金融公庫の創業融資】いくら借りれる?融資金額の目安をわかりやすく解説 の記事で解説していますのでぜひご参照下さい。

まとめ:最新の金利と金利優遇制度を確認して計画的に借入を

公庫の創業融資における金利は、基準金利としてはおおむねに2.7%-4.2%台の範囲で設定されています。しかし、特別利率や金利引き下げ制度をうまく活用すれば、より低い金利で借入できるため、創業時の融資制度としては非常に魅力的なオプションです。

借入を検討する際には、公庫の公式サイトで最新の基準利率を確認しどの制度が適用できるのかをしっかり把握することが大切です。実際の数字感が知りたい場合は事前に返済額のシミュレーションを行い、事業計画と照らし合わせてみましょう。

なお、公庫の創業融資の全体概要については【創業者&起業家必見】日本政策金融公庫の創業融資の流れ&審査対策を徹底解説に記載していますので合わせて活用ください。