創業融資を検討する際、多くの方が悩むのが「融資希望金額」の設定です。どうやって決めればいいのか、多めに希望を出してもいいのか等、不明な点が多いと思います。

この記事では、創業融資の際にいくら借りることができるのか、目安の立て方についてわかりやすく解説します。

なお、公庫の創業融資の全体概要については【創業者&起業家必見】日本政策金融公庫の創業融資の流れ&審査対策を徹底解説に記載していますのでご参照ください。

公庫の創業融資では借りれる金額に上限がある


公庫の創業融資(=新規開業・スタートアップ支援資金)で借りられる金額の上限は7,200万円(うち運転資金4,800万円)とされています。ただしこれは最大値であり、誰もが満額借りられるわけではありません。

そこで創業融資における実務的な上限のラインについて公庫の担当者に伺ったところ「一概に言うことはできませんが、感覚としてはおよそ3,000万円-4,000万円程度が実質的な上限のラインだと思う」というコメントを頂いたことがあります。支店によっても差があると思いますので単純にこの金額が上限だとは言えませんが、一つの参考数値として捉えておくとよいでしょう。

公庫の創業融資の実績は1件当たり平均約500万円

公庫が令和6年度に創業前及び創業後1年以内の方を対象に行った融資実績をみると、平均は536万円となっています。

下記の過去の推移をみるとおよそ500万円前後で毎年推移していることがわかるため、公庫の創業融資の実績としては約500万円が平均であると考えておくとよいでしょう。

時期融資総額融資件数
(創業前及び創業1年以内が対象)
平均融資額
令和3年度
(2021年4月1日~2022年3月31日)
1,406億円26,000件541万円
令和4年度
(2022年4月1日~2023年3月31日)
1,304億円25,500件511万円
令和5年度
(2023年4月1日~2024年3月31日)
1,301億円26,447件492万円
令和6年度
(2024年4月1日~2025年3月31日)
1,503億円28,032件536万円

出典:日本政策金融公庫ニュースリリース資料(令和6年度創業融資実績)より一部抜粋


最終的には自己資金や経験、事業計画等、総合的な観点で融資金額が決定される

創業資金総額に占める自己資金の平均割合は2割程度

公庫のHP上のよくある質問コーナーにおいて、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度であることが記載されています。これは例えば創業資金総額が500万円である場合、自己資金が100万円で融資金額が400万円ということになります。多ければ多いに越したことはないですが、融資金額は自己資金の4倍程度という点を目安として押さえておくとよいでしょう。

最終的には審査中で総合的な判断で融資金額が決定される

最終的には、自己資金だけでなく、事業経験、事業計画その他の申請書類から得られる情報が総合的に確認されたうえで、融資の可否や融資金額が決定されます。「自己資金があるから大丈夫でしょう」というスタンスではなく、申請書類の用意や面接対策など、しっかりと準備してから融資申請に臨むようにしましょう。

融資希望額は根拠を持って戦略的に伝える必要がある

「借りれるだけ借りたい」、「理由は説明できないけどなんとなく1,000万円借りたい」、「私っていくら借りれますか?教えてください」のようなコミュニケーションは自分で金額を決定することができないという点で印象が非常に悪いため避ける必要があります。事業計画を元に、「運転資金としてXXX円、設備資金としてXXX円の合計XXX円を借りたいです」と明確に融資希望金額を伝える必要があります。

資金繰りに余裕を持たせる目的で、あえて実際の必要金額よりも多いに希望を出す戦略等もあると思います。いくらにするかに関わらず、融資希望金額を伝える際は事業計画と整合させる必要がある点に注意しましょう。

運転資金の場合に目安となる月商等はない

申請時点で月商が一切なくとも運転資金を借りることは可能ですし、事業計画と整合する形で資金の必要性と返済計画について合理的に説明ができれば、必要な運転資金としていくらの金額で希望しても問題ありません。最終的には総合力で判断されるため、画一的に「月商の3カ月分」等と考えないようにしましょう。

まとめ:自分はいくら借りられる?を考えるために

公庫の創業融資では、平均的には自己資金の4倍程度が融資金額の実績としてありますが、「最終的にいくら借りられるか」は一律には決まらず、総合的な判断となります。

大切なのは、以下の3点をしっかり準備することです。

  • 自己資金をコツコツ用意すること
  • 事業に関連する経験や思いを自分の言葉で説明できること
  • 実現可能な事業計画を立てること

まずは事業計画と資金計画を整理して、自分に合った融資額を考えてみましょう。わからない場合は、専門家や金融機関への相談もおすすめです。当事務所でも公庫からの創業融資の支援を行っていますので、是非お気軽にご相談ください。

なお、公庫の創業融資の全体概要については【創業者&起業家必見】日本政策金融公庫の創業融資の流れ&審査対策を徹底解説に記載していますので合わせて活用ください。