公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)を日本政策金融公庫で申請する際、必ず確認しておきたいのが「必要書類」です。書類の準備不足は審査通過率や融資までのスケジュールに影響を及ぼすので注意が必要ですが、実は公庫の創業融資で必要な書類は、①申込時に必要な書類、②面談時に求められる書類、③審査を有利にするための追加書類の3つに分かれます。この記事では、それぞれの書類の概要とポイントをわかりやすく解説します。

なお、公庫の創業融資の全体概要については【創業者&起業家必見】日本政策金融公庫の創業融資の流れ&審査対策を徹底解説に記載していますのでご参照ください。

公庫の創業融資で必要な書類は3パターン

公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)で必要な書類は①融資申し込み時に必要な書類、②公庫担当者から面談時に持ってくるように依頼される書類、③審査通過率を高めるために用意すべき書類に分かれます。

①創業融資の申し込み時に必要な書類

こちらは公庫HP上で開示されている、インターネットでの融資申込の際に必要とされる資料の一覧です。

個人の場合法人の場合備考
① 最近2期分の確定申告書① 最近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含みます。)
② 見積書(設備資金をお申込の方)② 最近の試算表(決算後6ヵ月以上経過している場合または事業を始めたばかりで決算を終えていない方
③ 見積書(設備資金をお申込の方)
③ 日本公庫電子契約サービス(国民生活事業)利用申込書④ 日本公庫電子契約サービス(国民生活事業)利用申込書・電子契約サービスを利用の場合に必要
・利用申込書は日本政策金融公庫のHPよりテンプレートをダウンロード可能
④送金先口座の預金通帳の写し⑤ 送金先口座の預金通帳の写し
⑤企業概要書または創業計画書⑥ 法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本・国民生活事業の事業資金をはじめて利用する場合に必要
・企業概要書や創業計画書は日本政策金融公庫のHPよりテンプレートをダウンロード可能
⑥ 運転免許証(両面)、マイナンバーカード(表面のみ)またはパスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)⑦ 企業概要書または創業計画書
⑦ 許認可証(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)⑧ 代表者の運転免許証(両面)、マイナンバーカード(表面のみ)またはパスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)
⑨ 許認可証(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)

出典:公庫HP_ご提出書類 【インターネット申込用】を加工

②公庫担当者から面談時に持ってくるように依頼される書類

融資の申し込みを行うと、面談日程の調整のために公庫担当者から申請者に連絡が来ますが、そのタイミングで「面談時にもってきてほしい資料」についても伝達があります。以下によく求められる資料の例を記載しますが、依頼される資料の内容は申請者や公庫担当者によっても異なることがあるため、臨機応変に対応するようにしましょう。

「ネットバンクなので通帳というものが存在しないのですが、面談時にスマホの画面でお見せする形でよいでしょうか?」等、依頼された資料がない場合は代わりの資料でもよいことがあるので、公庫担当者に確認するようにしましょう。

書類名趣旨等
預金通帳・自己資金や支払状況について確認するため
・ネットバンク等で通帳がない場合はスマホの画面等をその場で見せることもある
源泉徴収票・前職が会社員であった場合は直近の源泉徴収票で直近の収入を確認するため
・法人で申し込んでおり、前職が個人事業主であった場合は個人事業主の時の確定申告書を依頼されることもある
借入金の返済予定表・公庫以外の借入がある場合は状況を確認するため
不動産の賃貸借契約書・事業実施場所(オフィスや店舗)や経営者の住所(自宅)の契約状況を確認するため
納税証明書・税金の納付状況を証明するため
・クレカ納付の時などは納付完了時のメール等でもよいかを確認しましょう
固定資産税課税明細書及び固定資産税の領収書・持ち家など不動産を所有している場合に固定資産税の納付状況を証明するため
代表者の本人確認書類(免許証・パスポート・マイナンバーカード)・面談時に本人確認を行うため

③審査通過率を高めるために用意すべき書類

これまでは公庫から求められる資料を説明してきましたが、求められずとも出しておいた方がよい資料が存在します。

(1)事業計画書(損益計画)

申込時に提出する創業計画書等では損益に関する計画が非常におおざっぱにしか記載できないため、どのように売上が成長していくか・コストがかかっていくのかが見えづらいです。そのため、別途事業計画書(損益計画)を準備して公庫担当者に提出すべきです。売上の資金回収タイミングや費用の支払いタイミングが特殊な場合は追加で資金繰り表を用意した方がよいと思いますが、基本的には損益発生タイミングと大差ないと思いますので、事業計画書(損益計画)のみでも問題ないと考えます。

(2)経営者の職務経歴書

公庫の創業融資では経営者の経験が非常に重要な要素ですが、申込時に提出する創業計画書や企業概要書では十分に説明されていないため、別途資料として用意すべきだと思います。転職活動等を経験している場合はすでにお持ちの場合もありますが、ない場合は作るようにしましょう。どんな会社でどんなポジションをやっていたかだけでなく、どういったスキルや経験を得たかという部分まで記載するようにしましょう。経営者一人では経験不足だが創業メンバーが経営者に足りない経験を持っているという場合はそのメンバーに関する紹介資料を加えてもよいと思います。

(3)事業理解に役立つ資料

下記の例のように公庫担当者が申請者の事業を理解するために役に立つ資料であれば、できるだけ用意してあげるとよいと思います。理解が進むほど審査通過率が上がります。

  • 商流図:「ラーメン屋」、「カフェ」等、消費者として関わりのある事業であれば理解できるので不要だと思いますが、ITやAIを利用したサービスなど、わかりづらい可能性がある事業の場合はサービスやお金の流れを示した商流図を用意するとよいでしょう。
  • 商品やサービスメニューの紹介:こちらも同様に商品やサービスに関して理解するために必要です。持参できる商品であれば(アクセサリー等)、面談時にサンプルを持っていくこともよいでしょう。
  • 店舗画像:店舗ビジネスを行う際は公庫担当者のイメージを高めるためにあった方がよいと思います。
  • チーム紹介:魅力的な経歴を持つ創業チームメンバーがいる場合は紹介しましょう。

その他、会社説明資料をパワポで持っている場合は印刷して持っていくべきだと思います。上記の例のほかにも公庫担当者が自分の事業を理解してくれるために必要だと思える資料はできる限り持っていくようにしましょう。

まとめ:公庫担当者の視点に立った資料準備を心がけよう

公庫の創業融資で必要な書類は、①申込時に必要な書類、②面談時に求められる書類、③審査を有利にするための追加書類の3種類に分かれますが、共通する考え方は「公庫担当者が申請者の事業や資金の状況をきちんと把握するために必要な書類」ということになります。ただ形式的に「依頼されたから用意すればいい」と考えるのではなく、公庫担当者の視点を考えて、「どうやったらもっと理解してもらえるだろう」という気持ちで用意することが大切です。

特に初めて創業融資を利用する場合、どこまで用意すればよいか迷うことも多いはずです。不安な場合は、専門家や公庫の担当者に相談しながら、余裕を持って準備を進めることが成功のカギとなります。公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)については、当事務所でも支援を行っていますので、是非お気軽にご相談ください。

なお、公庫の創業融資の全体概要については【創業者&起業家必見】日本政策金融公庫の創業融資の流れ&審査対策を徹底解説に記載していますので合わせて活用ください。